内容説明
「私たちは、好きな詩歌は手帖に写し、覚えて口ずさんだ。若いときにこうして覚えた詩歌は、わりにくっきりと心に刻みこまれ、いまでも思いがけないときに口をついて出てくる。」かく言う哲学者にとっての、若き日々に出会った忘れ得ぬ不滅の詩歌とは?芥川、茂吉、白秋、芭蕉、中也、プレヴェール、ランボー等々、とっておきの愛誦詩アンソロジーにして、とびっきりの名詩・名歌逍遙。
目次
水無月の歌―芥川龍之介と伊東静雄
一本の道―斎藤茂吉
秋の歌―王漁洋
もう一つの「秋の歌」―ボードレール
「紺屋のおろく」―北原白秋
移り・響・匂ひ・俤―芭蕉
「夜汽車」と「しら雲」―萩原朔太郎と室生犀星
「枯葉」/「バルバラ」―ジャック・フレヴェール
天明の印象派―暁台と青蘿
「乳母車」と「洗面器」―三好達治と金子光晴〔ほか〕
著者等紹介
木田元[キダゲン]
1928年山形県生まれ。東北大学文学部卒業。哲学者。中央大学名誉教授
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感想・レビュー
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Hiro
2
敬愛する哲学者、というより私にとってはエッセイストの著者はまた無類の詩の愛好者でもあったのだった。まず最初の章で芥川龍之介の詩を紹介するその趣味の良さに驚く。続いて様々な歌や俳句、詩が和洋中取り混ぜて紹介される。未知のもの多数。本書はアンソロジーなので折に触れ繰り返し読みたい。そして難解な哲学書と格闘しながら漫画にも詩にも深く感動できた著者を偲びたい。 2022/07/01
Omelette
2
「若いときにこうして覚えた詩歌は、わりにくっきりと心に刻み込まれ、いまでも思いがけないときに口をついて出てくる。」とあるように、短いながらも印象的な情景を読みこんだ詩がおおく集められている。普通のアンソロジーとちがうのは、著者の思い込みがはばかることなく織り込まれていること。著者の青年の思い出を辿るようである。それにしても(この時代の人はこんなものだと本人謙遜しているが)よく読んでいるものだ2009/09/23