出版社内容情報
洛陽、長安、江戸・・・詠まれたトポスから光を当てると李白や杜甫らの詩はいかに深く、広く読めるか?詩鑑賞の刺激に満ちた新世界。
齋藤 希史[サイトウ マレシ]
内容説明
詩は人と地をつむぎ、土地は詩で編み直される。漢詩鑑賞の刺激に満ちた新境地。
目次
その1 洛陽
その2 成都
その3 金陵
その4 洞庭
その5 西湖
その6 廬山
その7 涼州
その8 嶺南
その9 江戸
その10 長安
著者等紹介
齋藤希史[サイトウマレシ]
1963年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退、京都大学人文科学研究所助手、奈良女子大学助教授、国文学研究資料館助教授、東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授(中国文学)。『漢文脈の近代―清末=明治の文学圏』(2005年、名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞、『漢文スタイル』(2010年、羽鳥書店)でやまなし文学賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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5
落陽、成東、金陵、洞庭、西湖、廬山、涼州、嶺南、長安 長い中国歴史の中でことばと積み重なる場所トポスを紹介している。広い大陸の南東に集中するトポス、北の砂漠地帯ではなく南東部集中する。賑やかな繁華街で人々は集まり酒を酌み交わし言葉を重ねて、名句を産み残してきたようです。もちろん有名な漢詩を交えて紹介、解説してくれてます。漢詩の起こりから順を追って読めるのも良いですね。2022/05/22
さとうしん
3
詩の舞台となった都市や景勝地に注目。その四「洞庭」で、洞庭湖が時代によって大きさが異なるという話と、洞庭を舞台にした詩を絡めているのと、その八「嶺南」で、流謫地としての嶺南が流謫をうたった詩の表現の共有をうながしたという話を特に面白く読んだ。2016/07/16
かおりん
2
その七涼州。王翰による「涼州詞」の解説が興味深い。「夜光杯」は白玉か水晶かガラスいずれの可能性もある。ブドウ酒も白玉の杯もガラスの杯も皇帝への献上品となりうる。起句には、西域のイメージと宮中であってもおかしくない華やかさをまとっているという指摘。また、琵琶は元々西域の楽器で馬上で演奏されるなどが興味深かった。「涼州詞」は楽曲の名で西域に行ったことがないのに王翰は詩を付けたとか。2016/09/13
よしみず
1
読みやすいし面白い。第1章の洛陽が一番好き。花の都! 大都会! 青春! みたいな感じが景気良くて取り扱われる漢詩も華やか。もちろん都会だからこその人の移り変わりの激しさとか人生の儚さみたいなものも同じ詩中に含まれてて、この表現は洛陽の土地性がないと出来ないっていうのがわかりやすかった。時代が違っても同じ土地で詠まれた詩に共通性、てか具体的にいうと同じ漢字が含まれてるのが和歌でいう歌枕みたいで面白かった。2016/08/20
garyou
0
詩といふものは昔から人口に膾炙してきた詞章、過去の偉人の詩、そして詠まうとする土地などの影響のもと生まれるもの、といつたところか。著者は別のところで「漢詩といふのは遠くへつれて行つてくれる道具のやうなもの」といふやうなことを云つてゐて、この本を読むと物理的にも時間的にもへだたつたいろいろな場所でさまざまな風景を楽しめる、そんな気がする。2016/07/13