出版社内容情報
歴史の谷間から浮かび上がるもうひとつの近代とは。士族反乱から自由民権まで、変革期を生き抜いた人びとの挫折と夢の物語を語り直し、現代を逆照射する日本の転換点を克明に描き出す評論集。
内容説明
歴史の谷間から浮かび上がるもうひとつの近代とは―時代の底辺を直視した山田風太郎の史眼を手がかりに、変革期を生き抜いた人びとの挫折と夢の物語を語り直し、現代を逆照射する日本の転換点を克明に描き出す評論集。
目次
第1章 山田風太郎の明治
第2章 三つの挫折
第3章 旅順の城は落ちずとも―『坂の上の雲』と日露戦争
第4章 「士族反乱」の夢
第5章 豪傑民権と博徒民権
第6章 鑑三に試問されて
著者等紹介
渡辺京二[ワタナベキョウジ]
1930年京都生まれ。大連一中、旧制第五高等学校文科を経て、法政大学社会学部卒業。評論家。河合文化教育研究所主任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
25
私は、この著者も好きです。司馬遼太郎さんも好きです。やはり様々な意見があっていいと思います。山田風太郎さんも大好きです。確かに「坂の上の雲」というのは上からの目線で書いておられて、日本が西欧に追い付き追い越せという観点からはいいのでしょうが、その戦争を支えた底辺の人たちの目線というのも重要だとも私も思います。この著者のほかの本もいくつか読んでいますが、かなり丁寧に書かれていると感じています。2014/08/10
あきあかね
19
「歴史:ヒストリー」(history)と、「物語:ストーリー」(story)ーえてして前者は実証的ではあるが無味乾燥になり、後者は感興をそそるが正確さに欠ける。 著者の本は、「批評性を持ち、文学にも通じるような、物語的な歴史」を描きたいという言葉のとおり、歴史と物語の両者のバランスが絶妙である。 それを可能にするのが、「名もなき人々」のエピソード、活きた声のすくい出しの巧みさ。山田風太郎の娯楽小説に描かれる明治期の市井の人々、彰義隊崩れの物語、司馬遼太郎の「坂の上の雲」での宮古島の一漁師の行動など、⇒2019/03/12
勝浩1958
8
第3章「旅順の城は落ちずとも」で司馬氏の『坂の上の雲』を痛罵している。この国民的作家の最も読まれている作品を容赦なく切り捨てるところが凄い。本書の副題 ”名もなき人びとの肖像”にあるように氏の庶民への眼差しに惹かれます。学者や歴史家とは違う視点・感性で語らう市井の人々の姿に、今はもう望むべくもないいにしえの日本が偲ばれます。2014/08/09
在我壷中
6
『司馬史観』拒否する私には、然り!と。『橋川文三の後継者』と。『義勇公に奉ずる日本兵も望んで戦場に屍をさらしたわけではない』『戦国の世、惣村は自衛せねば為らなかった』『水争い』『村民は必ず戦闘へ参加せねばならなかった』『村全体の存続へ成員は自己を犠牲する心性』『国民の忠誠義務、一旦緩急あらば義勇公に奉ずる献身の義務』・・・我々日本人には村共同体への忠誠義務は何百年もの間へ肉体化するのでした。この伝統は十五、六世紀の『惣村』の成立に始まるのだ・・・『惣村』中世日本の百姓の自治的、地縁的結合による共同組織 2014/05/26
mitya
4
山田風太郎氏の著作を読んだことがないが、興味を持った。でも、知識がないと著者のように深読みできないかも。 明治維新後の氏族反乱や自由民権運動の流れがとても丁寧に掘り下げられていて、勉強になった。著者の、歴史の中で埋もれている人々を見つめようとする姿勢に感銘を受ける。2018/03/09