内容説明
この世界で一番大切なことを、きみは教えてくれた…孤独な少年と三本足の犬との出会い、魂の絆の物語。画家と詩人の共作が切り拓く新しい絵本文学の地平。
著者等紹介
山本けんぞう[ヤマモトケンゾウ]
詩人、ジャーナリスト。1960年、東京生まれ。東京大学法学部卒業。84年、NHK入局。テヘラン特派員、プノンペン特派員などを経て、2004年に退局し独立。以後、フランス、カンボジアなどを旅し、著作・取材活動に入る。絵本としては、『あの路』がデビュー作となる。現在は、カンボジアの地雷原で、綿花をオーガニック農法で栽培し、手紡ぎ手織りなどの伝統手工芸の復興を支援するプロジェクトを立ち上げ、活動中
いせひでこ[イセヒデコ]
画家、絵本作家。1949年生まれ、13歳まで北海道で育つ。東京芸術大学卒業。創作童話『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞を受賞したのをはじめ、絵本にっぽん賞、産経児童出版文化賞美術賞、講談社出版文化賞絵本賞など受賞作多数。フランスなど海外で翻訳出版されている絵本も多い。制作と共に原画展を各地で開催している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
197
窓の外を眺めていた。探していた。あるはずのないものがあるかもしれないから。誰しも居心地のいい場所を求めて歩いている。いつまでも、ずっと、待っている。その想いを大切に抱えている。三本足は尻尾を振って孤独な世界を見つめていた。晴れた日曜日なのに凍った匂いがする森をずっと走っていた。水たまりに映る空のように清んでいてほしいのに、この青の下でなぜ人は残酷な一面を見せるのだろう。たくさんの日々が過ぎても、きみとぼくは歩いている。一番大切な路が閉ざされても、あの路はつながっている。今日も雪が降っている。ただ音もなく。2022/08/13
のっち♬
175
母を亡くしおばに引き取られた不登校の「ぼく」と、路地に住み着いた「三本足」の犬の魂の絆の物語。いせの朧げな水彩画は表情こそ判然としないが、その佇まいや仕草から感情が十分に伝わってくる。主人公たちの孤独を引き立てる背景の淡いブルーの色調も絶妙で、光の結晶、雪、空といった澄み切った自然の光景が美しい。三本足を見つけて「なにか落っことした」場面も、山本が経験した離別への精一杯の共感が見られる。人生を進めながらもふとした瞬間に思い返す「あの路」は、今へ続いていることを確認することで静かに力強く背中を押してくれる。2022/08/18
やま
152
あの路 2009.09発行。字の大きさは…中。 文は、山本けんぞうさん。絵は、いせ ひでこさん。 表紙の少年と黒い犬の絵が、とても印象に残る絵本です。 ページを開けて行くと、いせさんの落ち着いた色遣いと、美しい青色が目に入って来ます。 ママと死別れた少年が、叔母さんの家へ引き取られて、従兄弟と学校へ行きますが、虐められて学校へ行けず。唯一の遊び相手3本足の黒い犬と走り回り、遊んでいます。 少年は、おばさんの家をで、3本足とも別れて町を出て行きますが、心にはいつも3本足が一緒にいます。🌿続く→2020/10/07
紫 綺
125
いせさんの儚くも美しい絵にピッタリ。ひとりぼっちの男の子と三本足のモップのようなワンちゃんとの心温まる、でもちょっぴり哀しい詩的物語。2015/03/21
KAZOO
123
山本けんぞうさんの文章といせひでこさんの水彩画によるコラボレーションがぴったりはまった物語でした。三本足の犬と母を亡くした少年がお互いを慰め合いながら過ごしていくのですが、いつか別れの日が来て、ということでしんみりした気持ちが残りました。時たまこのような本を読むことによっていつもせわしない世界を忘れさせてくれる気がします。2020/01/08