感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
38
宇宙創造からササン朝の崩壊まで、イラン四王朝50人の王の記録になるようですが、本書はそのなかの英雄時代の抄訳。中心となるのは無比の勇士ロスタムで、本書は彼の父ザールと母ルーダーベのロマンスで幕を開け、彼の死で幕を閉じる構成。このロスタムを縦糸に彼が仕えた王と勇士たちの活躍が描かれます。ロスタムの息子、悲劇のソホラーブ、悲運の王子スィヤーウシュ、グーダルズ家のギーヴや息子ビージャンの血で荒野を珊瑚のようにする勇壮な戦いぶりや糸杉の美女とのロマンスに、もっと彼らと行を共にしたいと思わずにはいられませんでした。2017/02/23
ロビン
23
10世紀イラン生まれの国民的大詩人フィルドゥスィーによる一大民族英雄叙事詩の抄訳。有名な英雄ロスタムの誕生から死までの逸話を、彼の父母や息子、養育係を務めた王子、孫、戦友の息子などが登場する6つの物語とともに収録している。基本的にゾロアスター教的な二元論に基づいて書かれているが、詩人本人はイスラム教徒であったとのことだ。インドの『ラーマーヤナ』やイギリスの『アーサー王伝説』などと似ており、民族的な要素を鏤めつつも普遍的な人間模様を描き出していて、今まで読んだペルシア文学の中で一番面白く読みやすかった。2020/08/09
彩菜
12
古の書物からある物語をお聞かせしましょう。それは策略・愛・魔法・戦闘に満ちた話で賢者が聞くに相応しい…。「王書」から英雄ロスタムの武勇伝を中心とした抄訳のようです。物語の底を流れるのは運命の無常さ。…時の廻りは気まぐれで、運命は思いのままに書かれていない。誰もが廻る天輪から逃れられず、去り行く時が来たら運び去られる…とそれは語ります。この死と運命の戯れの中に立ち、愛し、闘う勇士達に魅せられずにはいられません。宝石よりも輝かしく、獅子よりも強く、心明るい彼等は生の晴れやかさを纏い、物語を駆けて行くのです。2020/01/27
とし
4
古典を読もうということで、今回はペルシャ最古の英雄叙事詩を。11世紀初頭に成立した「王書」は、イラン辺りの英雄伝説を集大成して叙事詩の形にまとめたもので、実は超長編。この1冊に収録された6篇では全体の1割にも満たないのだそうな。本書は、中東最強の英雄・ロスタムを軸に、その父祖の代からロスタムが異母弟によって殺されるまでの時期の群像劇。田中芳樹の『アルスラーン戦記』に強い影響を与えた物語で、キャラ名の多くはここから借用している。大恋愛あり、戦争あり、謀略ありで、内容は盛りだくさん。2015/11/06
(ま)
2
イランの古代英雄叙事詩、少しゾロアスター教的 英雄ロスタムの戦闘と饗宴を中心とした抄訳2021/12/14