感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
10
奈良時代に口承された物語を平安初期に私度僧景戒が記したという116のエピソードの背景には、当時の仏教における善悪を社会道徳化し、因果応報の物語として普及させる意図が読み取れる。一方、悪を働けば動物に、善を働けば動物が人間に転生する話では、動物と人間の境界の曖昧なさらに古い社会の交流も垣間見える。争い・盗み・騙し・姦淫等の悪に対し、信心・施し・写経等の善という区別では、現世と来世が隣り合う仏教社会を想像させる一方、治療を施し、奇跡を起こす仏教以前のシャーマン的人物、役優婆塞(役小角)が記される点が興味深い。2022/10/25
北条ひかり
3
4時間54分(千葉県立西部図書館と音訳者さんに感謝) 平凡社ライブラリーにこの本の新版が収録されているが、音訳されているのはこちらである。この東洋文庫版は電子書籍としても入手可能。コンパクトながら、日本霊異記のすべての説話が収録されている。因果応報の考え方をこの国に広めたものとされているが、皇族などの身分の高い者に対して辛辣な表現を使っていたりして、大変面白い。繰り返し読んで内容を定着させたいが、幸いなことに今昔物語集や宇治拾遺物語などで引用が多く見られるようなので、並行して読むことが可能らしい。2015/05/26