出版社内容情報
御典医の家に生まれた著者は,父の許に出入りした洋学者,福沢諭吉,神田孝平,箕作秋坪らの若き日の姿を思いだしながら,その言動を語る。維新前夜の生活と時代の変遷をみごとに伝える回想録。
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感想・レビュー
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ちぃ
3
徳川家に仕えた御典医の娘が晩年に書き残したもの。西郷隆盛さまに関する記載もありますね。2023/10/22
のんき
2
蘭医であり御殿医であった桂川甫周の娘が語る幕末維新期の回想録。江戸を生きた人が語る隅田川の情景は夢のように遠く儚く美しく、どの話も面白い中ひときわ輝いて心に残った。2009/06/22
Tatsuhiko
1
桂川家という徳川将軍お付きのオランダ医学者の家系に生まれ、幕末から明治維新期を幼い頃に経験した今泉みねさんによる口述記。この本はどちらかと言えば江戸時代を美化し明治以降を貶めているが、お嬢様として「名ごりの夢」を見た江戸に著者がそうした追憶を馳せるのは無理からぬことかもしれない。著者の目を通して描かれるかつての隅田川、屋形船から降りてくる芸者、夏の花火、秋の月見、芝居小屋、なんと情趣を誘うことだろう!桂川家に出入りしていた進取の学者たちの描写もまた、美しいヴェールを通して見る幻想絵巻のようなのだ。2015/11/07
r
1
福沢諭吉など桂川家に出入りした著名人の逸話が秀逸。化学者・宇都宮三郎の逸話が面白かった。
まめはち
0
歌舞伎についての回想がまるで昨日見てきたかのように詳細で面白い。特に、忠臣蔵四段目の切腹の場、九代目団十郎(由良之助)と五代目菊五郎(塩谷判官)の回想。二人の無言の駆け引き(腹芸)をご見物が楽しむ様子。言わなくても聴こえ、見なくても見たように思える、落とさなくても涙が落ちたように感じる。この感受性は今の歌舞伎の多くのご見物にはないかもしれない。説明しないとわからない向きも多いように思う。しかし、昔のご見物にはこうした役者と一体となるような豊かな感受性が備わっていたことに羨ましさを感じる。2015/01/22