出版社内容情報
信じるものが希薄で生活の寄辺なさが漂う現代にあって、羨ましいくらいに確かな価値観をもって生きる市井の人々の暮らし。
沢村 貞子[サワムラ サダコ]
著・文・その他
内容説明
“こんにちさま”が、どこに祭ってある神さまか仏さまか、誰も知らない。ただ、律儀な昔の女たちは、その日その日を無事に生きている以上、怠けていては“なにか”に申しわけない…と、いつも胸の中で思っていた。そのなにかが“こんにちさま”という言葉になったのだろうと思う。第25回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
目次
あたりみかん
銭湯
初詣で
駄菓子屋騒動
源水のこままわし
亡者おくり
どんどん焼き
浅草の家
男の年令
たかが亭主の浮気〔ほか〕
著者等紹介
沢村貞子[サワムラサダコ]
1908年、浅草・千束町生まれ。馬道町、猿若町育ち。女優・エッセイスト。日本女子大学在学中に新築地劇団に入団、その後、日活太秦現代劇部に入社し、戦中・戦後とながく女優の道を歩む。小津安二郎監督作品等で名脇役として活躍、多数の映画に出演した。1989年に女優を引退したあとは、エッセイストとして数々の作品を残した。1996年、横須賀市で没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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まさ☆( ^ω^ )♬
9
ずっと読みたいと思っていたエッセイ。小説を読むのに疲れた時、合間合間で読むにはエッセイが良い。永らく積読としていた本書をようやく読んだ。大正から昭和初期にかけての、著者が幼少の頃の想い出が綴られている。当時の東京下町の様子がリアルに感じられ、歴史的な価値もあるのではないかと感じた。楽しく読めるエッセイでした。2024/02/25
こまち
0
女優の沢村貞子さんが、子どもの頃から22歳ごろまで暮らした浅草。粋でカッコイイ浅草っ子の姿がよいです。子供の目から見た昭和の昔の大人のやりとりが、面白い。裕福ではないけど、暮らしを楽しむ術を身につけていた老若男女に拍手!2017/12/22
ぷひぷひぷー
0
なつかしい言葉、風習、散りばめられていた。情に厚い人たち、今では見なくなってしまったご近所付き合い、お互いさま、助けあう連帯感。貧しいけど心に豊かさがあったんだなとしみじみ。ありがたこともある反面、迷惑なこともたくさんあっただろう。迷惑が先にきてご近所付き合いが少なくなった現代とどちらが幸せなのだろうか。また、仁王の松つぁんや萬盛庵のおとめさんなど、この本に出てくる人たちはみな「今」を精いっぱい生きていた。そんな人たちの人間くささや人生が心に響いた。何年後かにまたきっと読みたくなるに違いない。2021/06/07
ん〜ひげ剃ってるよ
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実際に浅草へ行く途中と帰り道,電車の中で再読完了。筆者が生活していた頃の浅草には,まだ江戸の名残りがあったのだと思う。明治に生まれた近代日本ではなく,良くも悪くもありのままの江戸文化。たとえば,女性が矜恃を持って家の衣食住を守る様子が描かれている。普段着としての和服が廃れてしまったように,江戸的な女性の生き方も過去のものであり,取り戻されるべきものでもない。芝居と祭りの中の江戸情緒は,やはり表面的なものであって,不便な生活を生きようとする知恵の中に庶民の文化の本質があるのだろう。 2021/03/16
MOTORI
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小泉今日子さんの『小泉放談』内で対談相手が、彼女のエッセイと通ずるものがあるとして挙げていた。ならば、と読んでみて、なるほどそうかもとも思ったし、池波正太郎さんの描く世界と空気が似てるな、とも思った。楽しく読めました。2018/03/02