平凡社ライブラリー
書かれる手

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  • サイズ 文庫判/ページ数 299p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784582766820
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0390

内容説明

いくつもの奇跡的な出会いが地の底の水脈でつながり、言葉と言葉を、人と人を艶やかな表面で結びつけ、だれも見たことのない深さに変貌させていくような瞬間に遭遇したとしたら、感謝をこめてそれを「文学」と呼んでおきたい―。須賀敦子、長谷川四郎、島尾敏雄、山川方夫…不幸のなかに砂粒のような幸福の輝きを見出す著者の“言葉の魔術”がつむぐ、十二人の作家たちの物語。

目次

書かれる手―マルグリット・ユルスナール論
幻視された横道―須賀敦子『ユルスナールの靴』をめぐって
端正なエロス―竹西寛子論
脱走という方途―長谷川四郎論
気鬱の子午線―島尾敏雄論
フィリップ・マーロウを訪ねたチェスの名人―田中小実昌論
二人きりの孤独―山川方夫論
濃密な淡彩―パトリック・モディアノ論のための覚え書き
芝生の意味するもの―ミラン・クンデラをめぐって
小さな痛みの音楽―フィリップ・ガレルとマルク・ショロデンコをめぐって
“形而上的な怪我”からの治癒―金井美恵子『ピクニック、その他の短篇』をめぐって
肉球的エクリチュール―金井美恵子『恋愛太平記』をめぐって
表面が深さになるとき―平凡社ライブラリー版「あとがき」にかえて

著者等紹介

堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。作家・仏文学者。早稲田大学教授。1999年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年『熊の敷石』で芥川賞を受賞、その後、2003年『スタンス・ドット』で川端康成文学賞、2004年『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞ならびに木山捷平文学賞を受賞、また2006年『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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コットン

66
12人の作家を題材とした難しい学術的論文で、理解出来ない所が多い。須賀敦子や金井美恵子や田中小実昌が印象的。特に、田中小実昌への:あえて投げやりな姿勢を貫きながらも、しばしば生来の意思の弱さが顔を出して、その規定できない幻影に似たなにかを「おはなし」に転換する誘惑に負けてしまう点にある。と評価しているのは良く分かる!2017/01/10

KAZOO

25
早稲田文学などに掲載された作家論を集めたもので、かなりさまざまなジャンルの作家を取り上げておられます。解説も三浦雅士さんで意外な感じがしました。堀江さんの文章というのは読んでいて静かな気持ちにさせてくれます。私は田中小実昌さんと長谷川史郎さんに興味があったので満足しました。2014/10/15

踊る猫

22
私にとって堀江敏幸の散文の面白さや旨味とは、理論的な凄みではない。その理論、ないしは単に論理的で綿密に展開される思考が私たちをどこにも連れて行ってくれず、ただ文章の中で煙に巻いてしまうその「迷走」にあると思っている。ここに収められた初期の考察群はその意味で、良くも悪くも読者を食ったところがない。極めて真摯に批評を展開しようと、硬い蓋をこじ開ける時にも似た情熱を発揮している堀江敏幸の姿がある。それはしかし、高踏的すぎてこちらを置いてけぼりにするようにも感じる。堀江はこの路線から、今の親しみやすさを選ぶことに2021/10/31

マリカ

16
堀江さんの物書き駆け出し時代の作家論集。今の堀江作品に感じる青白い炎と比べると、赤い火花が散っている部分もあるけれど、堀江さんは駆け出しの頃から紛れもなく堀江さんなんだと思った。三浦さんの解説がまたよかった。2017/03/01

寛生

11
こんなに美しく「書かれた」本はないのではないだろか。「書きたい」けど、書けない。それでも、何かが「書かれていく」のはどうしてだろうか。『<私>である手から<私でない>手か現出するとはどういうことなのか』と堀江は問う。そして、彼はこう加える。『<私ではない手>が立ち現れるまで、彼は書こうとするのである。』と。それはまさに『「書きたいと思いつつ書くことができない」人たちが己の「暗闇を通り抜けた」』ときだけに与えられる道であり光なのか。 2012/09/24

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