内容説明
いくつもの奇跡的な出会いが地の底の水脈でつながり、言葉と言葉を、人と人を艶やかな表面で結びつけ、だれも見たことのない深さに変貌させていくような瞬間に遭遇したとしたら、感謝をこめてそれを「文学」と呼んでおきたい―。須賀敦子、長谷川四郎、島尾敏雄、山川方夫…不幸のなかに砂粒のような幸福の輝きを見出す著者の“言葉の魔術”がつむぐ、十二人の作家たちの物語。
目次
書かれる手―マルグリット・ユルスナール論
幻視された横道―須賀敦子『ユルスナールの靴』をめぐって
端正なエロス―竹西寛子論
脱走という方途―長谷川四郎論
気鬱の子午線―島尾敏雄論
フィリップ・マーロウを訪ねたチェスの名人―田中小実昌論
二人きりの孤独―山川方夫論
濃密な淡彩―パトリック・モディアノ論のための覚え書き
芝生の意味するもの―ミラン・クンデラをめぐって
小さな痛みの音楽―フィリップ・ガレルとマルク・ショロデンコをめぐって
“形而上的な怪我”からの治癒―金井美恵子『ピクニック、その他の短篇』をめぐって
肉球的エクリチュール―金井美恵子『恋愛太平記』をめぐって
表面が深さになるとき―平凡社ライブラリー版「あとがき」にかえて
著者等紹介
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。作家・仏文学者。早稲田大学教授。1999年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年『熊の敷石』で芥川賞を受賞、その後、2003年『スタンス・ドット』で川端康成文学賞、2004年『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞ならびに木山捷平文学賞を受賞、また2006年『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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