出版社内容情報
ハンセン病患者に寄り添い続けた精神科医・神谷美恵子。瀬戸内の療養施設の経験、使命感、心に残る人々…たおやかに生きた人の随想。
神谷 美恵子[カミヤ ミエコ]
著・文・その他
目次
ひととしごと
島の診療記録から
万霊山にて
患者さんと死と
使命感について
自殺と人間の生きがい―臨床の場における自殺
いのちのよろこび
与える人と与えられる人と
医師が患者になるとき
初夢〔ほか〕
著者等紹介
神谷美恵子[カミヤミエコ]
1914~1979。大正3(1914)年1月12日、岡山県岡山市に誕生。父の仕事で九歳でスイスのジュネーヴへ。帰国後、成城高等女学校、津田英学塾(現津田塾大学)卒。結核で二度療養後、コロンビア大学を経て東京女子医学専門学校卒。戦争末期、東京帝国大学精神科に入局。終戦後、文部大臣に就任した父の通訳となり、GHQとの交渉に従事。大阪大学、神戸女学院大学を経て、母校の津田塾大学教授。ハンセン病の療養施設・長島愛生園精神科にも十五年勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pirokichi
19
読後、とてもおいしい水をのんだような、清らかなものが体を流れたような、そんな気もちになった。「死因となる病気の性質や経過、また死に行く人の年齢や気質や体力によっても死にざまは左右されるのだから、いわゆる大往生をとげるかとげないかは、そう問題にするに足らないことがらなのではないだろうか。それよりもふだん生きているとき、どのような生きかたするか、のほうが大切だと思う」。自分自身、〈死にざまは生きざま〉のような言葉に何かしっくりこないものを感じていたので、この神谷さんの文章は涙がでるくらいうれしかった。2021/03/25
おりがみ
8
精神科医神谷美恵子のエッセイ集です。医師、患者、母親、娘として現実に誠実に向き合い、悩んだ結果したためられた文章に揺さぶられました。経験の深さにも驚きますが、そこからさらに自省して他人に寄り添う、どこまでも真面目な強さに感動します。「生きがい」「使命感」「なぐさめ」平凡な言葉に語る人によってここまで深みを与えうるものかと敬服しました。STANDARD BOOKSシリーズの中でも特に日々の支えになってくれるすばらしい一冊です。2018/11/22
マイケル
6
ハンセン病(本文は「らい」)の療養施設「国立療養所長島愛生園」に15年間勤務した精神科医のエッセイを集めた本。離島という隔離にもっとも適した環境の「隔離の島」に住む、「極度の肢体不自由、顔貌その他の変形、感覚麻痺からくる身体図式の変容、らいの悪化の場合に生じる絶望感、家族および社会からの疎外(p16)」という悲惨ならい患者たち。自殺する人も結構いたよう。後半は著者の生い立ちを中心にした内容。9歳でジュネーブの学校に転校したことが大きな転機に。最後の章でグレン・グールドのバッハに触れているのがうれしい。2020/01/28
at@n
4
根源的な人間の生命への信頼ということが高らかに謳われていると思うのだが、時代背景もあり、ハンセン病隔離政策について積極的にも消極的にも賛成の意が示されているためかなり戸惑いながら読んだ。2021/06/05
kui
4
読めてよかった。深い思索から紡ぎ出される文章からは、風に力強く背中を押されるような印象を受ける。2020/09/21