内容説明
息子が自殺したとの知らせで、急遽、ペテルブルグへと駆けつける作家ドストエフスキー。息子の死の謎を追ううちに、創作者としての自分と息子との相克も明らかになっていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たつや
3
クッツェー7作目の作品は十九世紀のロシアが舞台。タイトルで想像するにトルストイやドストエフスキーが関連する小説かと思っていたが未読の「悪霊」が関連している様だ。父と子がテーマになっている。雰囲気が重いが、20のパートに別れているので読みやすくはある。構成が入り組んでいるので一度読んだだけでは理解出来ず。ただ、読んでる最中はクッツェー作品を堪能している気持ちで豊かに読めた。2023/11/18
ti
2
前回読んだクッツェーの「フォー」はロビンソンクルーソーのオマージュだったけど、今作はどうやらドストエフスキーの「悪霊」に基づく物語らしい。若くして息子を失ったペテルブルクの文豪=ドストエフスキーが、非常な繊細さの元、ペテルブルクの町を彷徨う。ただ、最も興味深いと言うかやり切れないと思ったのは、実際のドストエフスキーの息子が若死したと言う事実はなく、息子の自殺はクッツェー自身の体験談だという事をあとがきで知った際。少し暗い気分になる読書だった。2012/06/12
p
0
私はつねに父親たちに疑いの目を向けてきました。彼らのほんとうの罪、彼らがけっして告白しない罪とは、貪欲ではないかと。彼らは自分のためにすべてを欲しがる。彼らは財布を手放そうとはしない、そうするのが必要なときでさえ。彼らには財布がすべてだ。結果として何が起ころうが気にもかけない。(p.196)2022/04/02