内容説明
戦争の厳しい生活をへて到達した心豊かな暮し、浜子60歳代の円熟の日々をつづる。そこには自然の声を聴き、季に添って生きる、娘・芳子に引き継がれた思想の原点がある。鎌倉の自然の恵みを糧とした日々を描く随筆。
目次
春(蕗のとう;春の若菜 ほか)
初夏(鰹;柿の葉 ほか)
夏(とこぶし;鮎 ほか)
秋(秋の味;秋茄子 ほか)
冬(霜月;酒のかん ほか)
ちょっとお小言(電気製品;お中元 ほか)
著者等紹介
辰巳浜子[タツミハマコ]
明治37年生れ。香蘭女学校卒業後、辰巳芳雄氏と結婚、一女二男を得る。その家庭料理が評判になり、各婦人誌、初期のNHKテレビ「きょうの料理」などに登場し、料理研究家のさきがけとされる。その生涯は『まごころの人 辰巳浜子』(辰巳芳子編 文化出版局刊)に詳しい。昭和52年、七十三歳で逝去
辰巳芳子[タツミヨシコ]
大正13年、芳雄・浜子夫妻の長女として生まれる。母の傍らで会得したものを更に越え、命を支えるスープの研究・指導、大豆を広め、確かな食材を伝える運動と幅広く活動し、発言している。著書多数、平成22年、NHK放送文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゅー
9
料理研究家であった辰巳浜子による、季節折々の随筆集。彼女の生活意識において最も強く表れているのは「心をこめること」である。それは、人との接し方でもあり、木々への労りであり、料理への心構えでもある。「紙屑や、抜毛のはしにいたるまで命を通わせるほどの細かい心やりこそ、生活であり」と書いている。明治生まれの彼女は、現代(といってもすでに半世紀前)の若い女性が物を雑に扱う姿を見て、軽くたしなめている。彼女の生活への向き合い方はいま現在も古びることない。2020/10/02
nappyon
3
四季ごとにまとめられた随筆集。年末年始の文章が読みたいなーと思って手に取ったけど、それ以外の箇所もそれぞれの季節に想いを馳せつつ読んだ。ごまめ、八つ頭、ずいき…知らない言葉も出てきたので調べつつ読む。日々の生活に密着した随筆になっているので、世の中が随分変わったのだということがよくわかる。昔の随筆集を読んでみるのも面白いものだと思った。2021/12/30
雷華
2
【図書館】教科書を読んでいるような感覚にかられる、料理を中心とした生活のあれこれを語る本。古きよき時代の細やかな習慣や、戦後数十年後の経済成長期を憂うなど言葉は丁寧で分かりやすいのですが、いささか人を選ぶ内容かとおもいます。調理関連は呼んでてとても勉強になり、図書館の本なのに戦を引きたい衝動にかられてメモをいくつか…。現状をみたら、先生は更に嘆く世の中でしょう…2016/07/31
夏みかん
1
狭い狭い我が家の庭を眺めながら、広い広い庭が欲しいなと思いました。そして、今の日本には食べ物があふれているけれど本当に美味しいものはあまり残っていないんだろうなと思いました。清流で育った天然の鮎の味が懐かしくて恋しいです。2017/07/01