内容説明
段ボール暮らしのタカオは見知らぬ中年男にたたき起こされた。「おめえ、それじゃ銀座でホームレスなんざ張っていけねえぞ」。訳もわからずついていくと、その男、通称ヤッさんは驚くべき食の達人で、築地市場と高級料理店を行き来して生活する、誇り高きホームレスだった。「旨い食いもんと人間が好きなこと」だけ確かな謎だらけのヤッさんは、時には料理人を叱り飛ばし、食の世界に起こるアツイ事件の解決に奔走する。やがて弟子入りしたタカオにも、成長を問われる試練が訪れるが…。愉快度バツグン、飛び出す啖呵も痛快なユーモア人情小説の決定版。
著者等紹介
原宏一[ハラコウイチ]
1954年長野県生まれ。茨城県育ち。早稲田大学卒業後、コピーライターを経て、97年『かつどん協議会』で作家デビュー。書店員の熱心な応援により、2001年に文庫化された『床下仙人』が、07年にベストセラーに。同書は2007年啓文堂書店おすすめ文庫大賞にも選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひでちん
128
面白かった。 ホームレスを主役や題材にした作品は結構あるように思うし、そこから如何にして這い上がるか、または、一転して一気に成功者への道筋を辿るかを描く作品が多い中で、ヤッさんはヤッさんのままで終わったのが印象深い。 物語の語り部であり、もぅ1人の(実質的には)主人公タカオと家出少女のミサキが夫婦になって、将来的には蕎麦屋の暖簾分けを受けるという着地点・締め方も個人的には好きで良かったです。2021/05/31
鷹藤 森
121
築地場内のことがリアルに描かれており、親しみやすかった。以前築地で働いていた身としては、場内の人たちの親切さや心意気を改めて感じさせてくれる一冊でした。
Shinji
116
まあ、こんなせちがらい世の中ですからホームレスが存在するのは認めますよ。でもやっぱり汚れと臭いがなぁー.... ヤッさんのように「矜持」を持っているホームレスなら偏見を持つ事はないんですがねぇ。どんな形でも食べ物を得るには心構えが必要で、それを身をもってタカオに示すヤッさんが理想的でした。現在進行形の築地移転問題が出てくるのも、この作品が書かれた当時からきな臭さがあったということなんでしょうね。 で、頑張り屋のミサキなんだけど、オトコを見る目はそれで良かったのかい!?まあ面白かったので良しとするか!2017/03/31
やな
111
こんなホームレスおらんやろと思いながらも楽しく読了(^^♪2016/07/28
ゴンゾウ@新潮部
110
謎のホームレス、ヤッさん。矜持を持って生きている。ある訳がないと思いながらもヤッさんの人間力にぐいぐいと引き込まれた。人間、やっぱり矜持を持って生きていかなきゃと思わせてくれる。予想外の読後感でありました。2017/07/25