出版社内容情報
流産した哀しみの中にいる夫婦が捨て猫を飼い始める。モンと名付けられた猫は、夫婦や思春期の闇にあがく少年の心に、不思議な存在感で寄り添ってゆく。20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた。濃密な文章力で、生きるものすべての心の内奥を描き出した傑作。
内容説明
ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。そして20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた…。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。
著者等紹介
沼田まほかる[ヌマタマホカル]
1948年大阪府生まれ。主婦、僧侶、会社経営などを経て2004年『九月が永遠に続けば』で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
640
タイトルからは、日常と、その一歩裏側に潜む世界が描かれるのかと想像していた。 物語の前半と後半との脈絡にはやや難を感じるものの、読後感は悪くない。 老いと終末を見事に描いた1篇といえよう。 とりわけ、看取る側の救いはこうした形でこそ語りえたのかも知れない。2012/01/09
遥かなる想い
402
沼田まほかるの小説が急に本屋に置かれるようになり、『9月が永遠に続けば』『彼女がその名を知らない鳥たち』が独特の世界を描いていたので、本作を読んでみたがイマイチだったと思う。子供を流産した中年夫婦と一匹の子猫との奇妙な関係を描く一部はそれなりに沼田ワールドだったが、二部・三部とトーンダウン。 ただ、動物好きな人には身をつまされるのかもしれない2011/11/06
ミカママ
371
間抜けな私は、これが連作集だと最終話途中まで気づきませんでした。第二話がちょっと異色すぎて。過去に何度か猫を見送ったこともあり、やはり第三話が好き。希望のないストーリーのようですが、じつはモンは、おじいさんに死ぬことって自然なことなんだよ、怖くないよ、って希望を残して逝くんですよね。今まで読んだまほかるさんの中では一番後味のいい作品。2014/01/26
三代目 びあだいまおう
339
恐るべし沼田まほかる。読後、喪失感と空虚感に襲われてます。冒頭はようやくお腹に授かった命を流産で失なった夫婦視点。死にかけてる子猫の「生きたいよ!助けて!」と叫ぶような鳴き声に、産まれることなく亡くした我が子の叫びを思う妻。後半はその妻を亡くした夫の視点。猫の『生きる』と『少しずつ萎みゆく命とのいさぎよき態度』が語られる三部構成。猫と一緒に暮らした経験があれば猫が人間と会話できることを知っている。立場だって、自分は家族の一員だって知っている!スゴいよ! 誇り高き猫の生きざまに揺さぶられたくば読もう‼️🙇2019/01/18
ちょこまーぶる
284
読み進める事が辛くて・悲しくて読む事を辞めようかと思いながら読んだ一冊でした。でも、読み終わった時は、読んで良かったなと思わせてくれる貴重な一冊でもありました。第1章で理由はあるにせよ信枝は拾った子猫に対して、そこまで冷酷になれるのか?と腹立たしく思いながら読み、第3章では、20年後の年老いた信枝の夫と老猫の二人?の世界がすさまじいぐらいに愛おしく表現されていて、生き物と暮らす覚悟や死への準備とその葛藤をも生々しく伝えられたにもかかわらず、悲しみの中にも心には温かいものが芽生えた思いが一杯になりました。2015/12/07