出版社内容情報
コンピュータなんて吹けば飛ぶようなもの――80歳を迎えた解剖学者が何にも囚われない筆致で現代人の盲点を突く。「平成論」も収録。
養老孟司[ヨウロウタケシ]
著・文・その他
内容説明
ある大学で「養老さんじゃないですか、もう死んだと思ってました」と話しかけられた著者。「要するにすでに死亡済み。そう思えば気楽なもの」と嘯き、超越した視点で「意識」が支配する現代社会の諸相を見つめる。人工知能が台頭する時代に「コンピュータは吹けば飛ぶようなもの」と語り、平成においては「万物が煮詰まった」と述べ人口や実体経済の限界が見えた時代の生き方を考える。現代の問題は「一般論としての人生と、個々の人生の乖離」と述べ、一般化からこぼれ落ちた個々の生へ眼差しを向ける。現代人の盲点を淡々と衝く一冊。
目次
第1章 どん底に落ちたら、掘れ
第2章 社会脳と非社会脳の相克
第3章 口だけで大臣をやっているから、口だけで首になる
第4章 半分生きて、半分死んでいる
第5章 「平成」を振り返る
総論―あとがきに代えて
著者等紹介
養老孟司[ヨウロウタケシ]
1937年、鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。95年、東京大学医学部教授を退官し、同大学名誉教授に。89年、『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だんぼ
232
「先生のファンなんです、という人から質問されて、先生のような考え方でいると、会社で居心地が悪いんですけど、そう正直に言われたことがある」どこか養老先生に似てると感じる私。だから養老先生に会いたい、などとならないのも、またそう感じる理由。「勤めを辞めたら、自分がずいぶん楽になった」「現代社会から外れている人に注目する」こんなとこもそうかなと思う2024/05/06
Aya Murakami
99
図書館本 養老さんの別の本で「医学部は理系じゃない」という内容のことが書いてあって「妙に医学部に詳しいな」と思っていたら本書によると医学部は解剖学必須でその関係で解剖学の養老さんが医学部に関わっていたみたいです(謎はとけた) そしてAIの話。コンピュータは人間の意識活動にとってかわるらしいですが人間はとってかわられるわけではないとのこと。意識活動以外メインの仕事は奪われないってこと…かな?それでも意識は便利な仕事ツールなので奪われない仕事がどんなものか見当つかない。2021/04/04
Tsuyoshi
65
月刊「Voice」での時事エッセイをまとめて書籍化したもの。平成に起きた様々な出来事を「すべてが煮詰まった時代」と称して警鐘を鳴らしつつ、どう折り合いをつけて生きていくべきか独自の考えが展開されていた。著者の作品は何冊か読んでいるが、本作でも相変わらずの独創的な着眼点や語り口につい魅了されてしまった。特に印象的なものとして、個人か国家かといった偏重思考の進展による「公的な社会の煮詰まり」EU離脱等から見る「グローバル社会の煮詰まり」宗教テロから見る「一元的な価値観の煮詰まり」等が挙げられる。2018/04/18
ルピナスさん
64
世には色々な子育て本があるが、私が最も共感したのは養老孟司先生の本。直接子育てについて触れていなかったかもしれないが、情報に溢れる現代にあって、子供に必要なのは自然の中で具体的な体験を重ねて行くこと、量に振り回されないこと、自分の感覚を大切にすること。私は養老先生のおかげであるべき論と向き合う勇気をもらい、子供達は早い段階で習い事などを断捨離しその時々で興味のあることに没頭する時間を持てた。今は先生の言葉が自分自身の心に響く。今の世の中は確かに煮詰まっているし自分自身もそう思いがち。五感を大切に過ごしたい2022/03/29
けんとまん1007
43
養老先生ならではの切り口で、今のこの国を憂いていると思える。すべてに同感とは言えないが、基本にあること。人をどう思い、大切にするのかという視点。今は、そこが蔑ろにされているように思えてしかたない。長年の澱んだものが、人のこころをむしばんでいるし、それが、目の前の一瞬のことしか考えないことにもつながっている。いろんなものが劣化している。ただ、希望ももちろんある。タイトルの意味は、とてもひろがりがある。そのためには、自分で見て感じて考えること、そして動くこと。2019/02/05