出版社内容情報
自己責任論が主流になる社会で、福祉はなぜ正当化されるのか。この時代の「自由」の本質とは。マルクスやセンの理論を問い直す。
【著者紹介】
立命館大学経済学部教授
内容説明
「自己責任」の時代だからこそ貧困対策が必要である。個々人の自由の対立、文化や宗教の多様性…マルクスやセンを手掛かりに、新しい時代の「自由」を問う。
目次
第1章 責任のとり方が変わった日本社会
第2章 「武士道」の限界
第3章 リベラル派vs.コミュニタリアン
第4章 リバタリアンはハイエクを越えよ
第5章 自由と理性
第6章 マルクスによる自由論の「美しい」解決
第7章 「獲得による普遍化」という解決―センのアプローチをどう読むか
第8章 疎外のない社会への展望
著者等紹介
松尾匡[マツオタダス]
1964年、石川県生まれ。87年金沢大学卒業。92年、神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。久留米大学経済学部教授を経て、2008年より立命館大学経済学部教授。専門は理論経済学。07年、論文「商人道!」により第三回「河上肇賞奨励賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
22
自由とは何か。責任とは何か。経済学的に述べられている。特にマルクスの疎外論やアマルティア・センのケイパビリティ(センについてはそれほど詳しくはなかったが)から、自由を論じている。個人的には、人権・尊厳・権利の視点も重視しながら論じてほしかった。著者の論立ては危うさもあると思う。2020/09/17
おおにし
17
人間関係には「固定的人間関係」と「流動的人間関係」がありそれぞれに責任の取り方が異なる。企業においては「メンバーシップ型責任」と「ジョブ型責任」があり、今まで前者であった日本企業はグローバル化の中で後者への転換が必要となっている。というように対立項目を示しながら、自由と責任について丁寧な議論が進むのですが、中身が濃くて、さっと読んだら議論の展開を見失ってしまいました。じっくりと再読してみたいと思います。2016/09/17
うえ
9
大塚久雄の「勧善懲悪劇が戦後日本でウケた理由には、やはり戦争体験があったと思います…悲惨な結末をもたらしてしまった。この反省の中で…個人が資本主義を生み出した欧米こそが近代化のあるべき道だ、お上が主導して近代化した日本では個人の自立が足りなかったという大塚の含意は、痛烈に人々の心に響いたのだと思います。ところが70年代くらいから、この大塚の歴史観に対する批判がわきおこってきます。この背景には、フランスのブローデルらアナール派の歴史観の広まりや、ウォーラーステインの世界システム論の考え方の流行があります」2019/11/06
ケイ
7
難しかったです……。どこまでも分かりやすく説明しようとしてくれてるのは分かったのですが、内容をどこまで理解出来てることやら。とりあえず、「こんな時代だからこそ人々が連帯して支えあっていくことが必要」という考え方。そして、「異なる思想も折衷して取り入れることで何とか理想的な状況が現出する」ということは理解できました。とりあえず、読む時は腰を据えて読むことをオススメします……。2016/03/09
代理
5
根拠の無い悪い「考え方」に縛られる生身の個人を開放するにはどうすれば良いのか。「皆、残業するだろう」という考え方に縛られた結果、本当に「皆、残業する」世界。『獲得の普遍化』は素晴らしい考えだと思う。私も流動的な人間関係のほうが好きだが、本書の内容の全てには同意できない。しかし示唆に富む内容で楽しかった。2019/11/24