出版社内容情報
昭和初期、彗星のごとく時代の寵児に躍り出た幻の大歌人が、ハンセン病との闘いの中で見出した生きる意味を、執念の調査を基に描く。ハンセン病と闘った幻の大歌人
昭和13年、改造社が『新萬葉集』を刊行する際、全国から募った短歌の中に、齋藤茂吉、釈迢空、与謝野晶子ら審査員をひときわ驚かせる作品があり、うち11首が収録され、全く無名の歌人が彗星のごとく世に躍り出た。
それらの作品は、国立らい療養所・長島愛生園で療養しているハンセン病患者からのものだった。のちにベストセラーとなる歌集『白描』の作者、明石海人である。
当時彼はすでに失明しており、作品は口述筆記での応募だったが、『新萬葉集』刊行後、彼の歌を絶賛する評論が相次ぎ、「現代の万葉調」随一の作者だという世評も高まっていった。しかしその2年後、幻の大歌人はわずか37年の生涯を閉じることになったのである。
本書は前作『知の巨人 評伝生田長江』に続き、ハンセン病作家への並々ならぬ畏敬の念を抱く著者が、酷い差別偏見にさらされ、過酷な宿命に翻弄されながら、生きる希望と家族への愛を歌い続けた歌人の生涯を、地を這うような取材を基に浮かび上がらせた、渾身の力作である。
表題は代表作の一つ「さくら花かつ散る今日の夕ぐれを幾世の底より鐘の鳴りくる」から。
荒波 力[アラナミ チカラ]
1951年静岡県生まれ。静岡工業高校(現・科学技術高校)土木科卒。作家・評論家。著書に『知の巨人 評伝生田長江』(白水社)。
内容説明
ハンセン病と闘いながら生きる希望と家族への愛を歌い続けた幻の大歌人。
目次
明石海人とは
宣告
明石叢生病院
長島愛生圏
自らが光る
第一回短歌祭
『新萬葉集』
『白描』
明石海人の死
家族の絆
長島の光ヶ丘
著者等紹介
荒波力[アラナミチカラ]
1951年静岡県生まれ。静岡工業高校(現・科学技術高校)土木科卒。作家・評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。