出版社内容情報
陰謀と暴力に彩られた政治抗争の時代を生きた現実主義者カエサルを、彼自身の言葉に基づき、等身大の人間として検証する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
7
カエサルの評伝。上巻はルッカ会談まで。全体的に突き放したというか抑制的な書き方が印象的で、のちの成功や独裁官就任から逆算した人物像となることを慎重に避けている。著者も述べるように、内乱が続き既存の秩序が揺らいだ当時のローマにおいて、カエサルのような野心家は決して珍しい存在ではなく、前半生の時点ではライバルたちと比べても抜きんでたところがあるわけではないことがよくわかる。もしガリアで失敗していたら、民衆派に取り入った執政官ということで、クロディウスくらいの評価で終わったのだろうか。2019/01/09
ケニオミ
7
「独裁者」と言えば、ヒトラーなどの名が浮かぶため、同じ枕詞を冠するカエサルのイメージは甚だ悪かったが、それを払拭したのがカエサル恋しの塩野七生氏だった。しかし塩野氏は恋人への恋慕の情が篤いため、英雄としてのカエサルが前面に出た印象が強かった。今回の「カエサル」だが、抑制のきいた語りで非常に好感が持てる。彼が歴史上偉大な人物となったのは、才能のあった人達がスッラにより殺された幸運と、いつ殺されてもおかしくなかったのに生き延びた幸運が大きいというのも頷けた。カエサル読むなら塩野よりも本書を!(まだ前篇だった)2012/11/09
ジュン
3
カエサルは塩野七生のラブレターじみたカエサル伝を読んで以来ずっと歴史書として読みたい人物だった。拡大したローマにおいて、より多くの人々と共通の目的を設定することに長けていたのがカエサル。その人生はまるで良質な小説のように面白い。2019/04/30
takao
2
ふむ2022/10/06
しめおん
1
カエサルがよく言われるような先見性を持った共和制末期の英雄という理想的な人物じゃないことがよく分かる本。彼はとてもギャンブラーで、その点一歩間違えていればカティリーナになっていたかもしれないという考えは興味深かった。ボリュームが十分で、当時の時代背景や文化などについて触れている箇所も多く、カエサルの伝記だけでなく、前1世紀のローマを知るためにもいい本。2022/08/28