出版社内容情報
1902年に出現した小説『超男性』は、風変りな性交ゲームと自転車のスピード競技の描写を通して、人間の機械との闘い、愛の真実と無限のエネルギーへの憧憬を盛り込んだ「新しい神話」を構成し、小説というより詩的幻想の書、現代文明への予言の書ともいえよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キャンダシー
53
アンドレ・マルクイユは、なぜ神は無限小であることを証明しようとしたのか。ナース姿の椎名林檎が硝子の壁を蹴破るように、彼の衝動が背後に現れた黒天使の羽ばたきとともに、一枚の黒羽根が空間を引き裂いて中空に文字を書きつける。「Fiat voluntus tua」（汝の意成就されんことを）。だが機関車、そしてエレンとのレースに舞うのは羽根ではない。永久運動のリュランスの赤い薔薇だ。機械仕掛けのアンチヴィエルジュの生産する愛のスキャンダルの彼方に残されたものは、真実の愛を証明する、たった一つのバタヴィアの涙だった。2019/11/30
海恵 ふきる
10
当初は、理解し難いものの心地好い、散りばめられたフランス風のユーモアに面食らったため、それに慣れる時間が必要だったが、途中からそんなことよりも物語の持つ疾走感に巻き込まれていった。猛烈に回る車輪に轢かれてぺちゃんこになって、タイヤに貼り付いたままグルングルンと回されるような読み心地だった。しかし終盤になると愛の本質のようなものが静かに現れて、こんなめちゃくちゃなのに愛は語れるのか、いやむしろ愛とはめちゃくちゃなものの向こうにしか現れないものなのかもしれないと呆然とした。2022/10/17
乙郎さん
10
完全に理解できたとは言えない。おそらく20世紀初頭の人々は機械技術の進展により人間としての尊厳が奪われてしまうのではないかという不安が大きかったのではないだろうか。その一点をセックスや運動に集中させて描いている感がある。このようなコンプレックスは、バラードの「クラッシュ」などのSF作品に形を変えて現われている。2009/08/23
；
7
20世紀最初の(？)クソ小説(褒めてます)。2018/05/28
エビアン子
2
す、すごく良く分からなかった...。多分最後のセリフがこの本そのものなんだろうなと。獣よりも強い人類は、現在機械が支配するこの世界で、機械よりも強くなければならない。そういうこと？また読もう。2023/06/05
