白水Uブックス
ジョヴァンニの部屋

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  • サイズ 新書判/ページ数 293p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784560070574
  • NDC分類 933
  • Cコード C0297

出版社内容情報

 パリに遊学中のアメリカ青年のデイヴィッドはふとしたことから同性愛者の世界に踏み込み、ジョヴァンニと知りあう。2人は安アパート《ジョヴァンニの部屋20》で同棲生活を営む。やがてヘラとの結婚によってこの異常な生活は一応終わるが、デイヴィッドの歪められた性への強い執着に妻は去って行く。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

125
デイヴィッドの傲慢さよ! ゲイであることを心で認められなくても、身体が、欲望が、それを現しているではないか。彼がそれを認めない欺瞞のために、ヘラは振り回され傷つき、デイヴィッドに捨てられたジョバンニは自暴自棄となり死刑を待つ身。作品は、デイヴィッドのわすか数分の回想録。メランコリックで後悔が見えるものの、彼が傷つけた人の痛みに対する共感がみられない。全く利己的で、自分の苦しさを美化してそれに浸っている。しかし、小説の美しいリズムに私も絡みとられ、彼のメランコリックな回想に抗えず、共に湿った溜息をはく。2016/11/28

まふ

107
米国の黒人作家によって綴られた米国の白人のパリにおけるイタリア人男性との同性愛の顛末の物語。両性具有者的な主人公のデイヴィッドは女性の相手であるヘラと婚約にまでこぎつけるが、ジョヴァンニが忘れられずに別れる。この男の気持はわかるようで、やはり正直分からない。むしろ、なぜボールドウィンというこの黒人作家がパリの裏町の白人の同性愛社会を描こうとしたのか、という点の方が興味深い。この作家も同性愛だったのであれば、話は簡単だが、どうもこの方面は苦手なので追及する気力が湧かない。G1000。2023/08/09

藤月はな(灯れ松明の火)

96
人を愛することは怖い。我を忘れ、自分勝手な自分も相手を思い通りにしようとする心もさらけ出し、拒絶されたり、相手の信頼に付け込み、傷つけてしまうのが怖いから。世間体や周囲の眼に縛られ、心は決して剥き身になる事はなく、自己弁護と言い訳ばかりで人を傷つけてしまうデイヴィッド。そんな彼の姿は、逃げを打ってしまう醜い私の姿でもあって読むたびに嫌悪感と後悔と恥で息が詰まりそうになる。デイヴィッドの心が知りたかった二人の内、一人は破滅へ向かい、一人は傷つき、去っていく。自分を認められないことが導く空虚な呪縛に震える。2018/06/20

NAO

66
パリで生活するようになった黒人作家ボールドウィンは、黒人である自分も、白人であるアメリカ人も、ヨーロッパでは、まったく同じ程度にアメリカ人だということに驚いたという。白人青年を主人公としたこの作品の中でも、アメリカ人がヨーロッパでは画一的に見えるということや、アメリカ人とヨーロッパ人は感じ方)考え方がまったく違うということが、何度も描かれている。アメリカ人とヨーロッパ人の違いを描くのに、ホモセクシャルな愛である必要があるのかとも思うのだが、この物語の中ではヨーロッパ人の方が自分がホモセクシャルである⇒2022/01/05

ペグ

54
自分の激情に溺れ、挙句、死刑になるジョバンニ。平凡な主婦になりたいと希うヘラ。そして既成概念から逃れられず、周囲を傷つけ欺瞞とも取られるような生き方しか出来ないデヴィッド。恋愛小説として読めますが、私は人間の中にある欲望の小説として読みました。欲望は良くも悪くも他を巻き込んでいきます。再読、そして他の作品も読んでみたい作家です。2017/02/25

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