内容説明
個々の精神科医は、日頃何を考え、何を感じながら、投薬を行っているのか。その内に秘められた営為を開陳し、相互に照らしあわす画期的なワークショップが開催された。本当に、EBMと精神薬理学の知識を身につけるだけで、薬物治療、ひいては精神科臨床に通暁することが可能なのか。薬を知り、患者を知るとはどういうことか。まさに臨床の本質を射ぬかんとした、たましいの一作である。
目次
第1章 官能的評価を語る意義とは(官能的評価とは何か;官能的評価をいかに考えるか)
第2章 症例検討会を通してみる官能的評価(うつ病として治療されていた双極スペクトラムの親子;体感幻覚を読み解く)
第3章 それぞれの薬の官能的評価を語ろう(ジプレキサ;リスパダール;セロクエル;ルーラン;セレネース ほか)
著者等紹介
神田橋條治[カンダバシジョウジ]
伊敷病院副院長。1937年、鹿児島県加治木町生まれ。1961年、九州大学医学部卒業
兼本浩祐[カネモトコウスケ]
愛知医科大学医学部精神神経科講座教授。1957年、島根県松江市生まれ。1982年、京都大学医学部卒業
熊木徹夫[クマキテツオ]
あいち熊木クリニック院長。1969年、京都府京都市生まれ。1995年、名古屋市立大学医学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
47
神田橋先生たちを含む、投薬・服薬体験をもとにした精神科薬物のナラティブ。先生は書く。<本書は、患者と治療者との治療協同作業の道具である「薬の作用」というイメージを場にして、瀕死の状態にある医療のエロスを蘇生させんとの意図から生まれた>と。【官能的評価とは何か】熊木徹夫氏:<処方あるいは服用した薬物について、患者さんあるいは精神科医の五感を総動員して浮かび上がらせたもの(薬物の“色・味わい”といったもの)や、実際にしようしてみた感触(薬効)、治療戦略における布置(他薬物との使い分け)といったもの>を指す。⇒2023/02/24
紫羊
8
神田橋先生が面白すぎる。もし私が心を病んだら神田橋先生のような精神科医に治療してもらいたい。2019/04/19
むく
4
再読。前回から思ったよりも間隔が開いていた。「みんな、面接が下手なの」なんて他の先生方をタジタジさせながら繰り出す、神田橋先生の言葉が面白くて。それをまた読みたくて2回目読み始めたら、その他の部分も新鮮に学びが多い。医師ではないため理解できないこともあるが、精神科領域での薬物治療ひいては、薬というもの自体について考えさせられる。薬はこわいというイメージが先行している感があるけど、治療者と患者を媒介してくれるものだと捉えてうまく扱えば、凄く豊かな精神療法になるんだろうと思った。2012/03/25
水野
0
こちらは精神科医サイドから。ベテラン精神科医の先生の語りに引き込まれる。若輩者からすると半ばオカルトの領域。薬について語ることは、自分の感覚をしっかり持って、主体的に薬を使うことに繋がるのかもしれない。2014/01/29
イクル
0
神田橋先生やっぱり面白い。不安定な時期の人は落ち着いているときに読むのがいい。2009/10/04