内容説明
テストは0点。女子にはフラれ、神父にも叱られ、授業はサボって映画三昧。周囲も心配するほど落ちこぼれだった少年は、やがて皆に愛される作家となった。生い立ちから「作家・遠藤周作」の誕生、作家仲間との交遊録まで。狐狸庵先生が語る、涙と笑いの回顧録。
目次
私の履歴書(初恋;成績表;東海林太郎の妻 ほか)
履歴書補足(一所懸命になると;兄弟;三箱のひかり ほか)
先輩・友人のこと(堀辰雄氏のパイプ;吉川英治氏のこと;ベランダにて ほか)
著者等紹介
遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923年東京都生まれ。幼年期を満州大連で過ごし、33年帰国。35年、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒業後、フランスのリヨン大学大学院へ留学。55年、『白い人』で第33回芥川賞を受賞。主な作品に『海と毒薬』(新潮社文学賞、毎日出版文化賞)、『沈黙』(谷崎潤一郎賞)、『キリストの誕生』(読売文学賞評論・伝記賞、日本芸術院賞)など多数。96年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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akira
23
古本にて。 また見つけた遠藤氏のエッセイ。先のパリ留学日記とはうって変わって文字通りの『いたずらじじい』感が満載。ゲラゲラ笑いながら読めた。この著者があの『深い河』を書いたとは到底思えない…人間はひょうきんな人ほど中身はわからない。 印象に残るエピソード。若かりし頃に東京ー大阪間で出会った行きずりの男。世間話の最後にゆずってくれた貴重な一箱のタバコ。こういう何気ない親切は、どれだけ年をとっても忘れない。人間、優しさは忘れないものだなと。 「袖ふりあうも他生の縁だ。これ喫って、しっかり勉強してください」2021/11/22
金吾
15
○なかなか期待されていない子供時代の話はかなりクスッとする部分があります。余裕があるのかユーモアがあるのかなと思いました。「兄弟」「ファン」はかなり笑えました。2021/12/27
桂世
14
「これはあちこちで書いたことなので割愛する」のところを読みたくなったので、遠藤作品をこれから読んでいきたい。特に、信仰についてを読みたい。神は存在ではなく働きのことだ、と少しだけこの本に書いてあって、響いた。フランス留学で孤独で寒く寂しい日々に出会った猿とのエピソードが好き。2019/12/26
hiromi go!
13
「我々はなにか苦しい時、苦しいのは自分ひとりではないことを考える必要があるようである。共に苦しみを通して他人と結びつくことがどんなに必要であろうか。」思った以上に良い本でした。2014/03/01
みや
11
日経新聞『私の履歴書』の連載(89年)に単行本のエッセイを加えた文庫本。氏のエッセイは、劣等生としての生い立ちがベースにあるからか、偉ぶらず、それでいて卑屈すぎないので嫌味がない。難解な表現を好まないのもいい。過去を振り返り、自分を形成してきた他者との関わりや人生の分岐点における各選択を何らかの「働き」によるものと総括し、これを「神」のなせる業と考える境地に至ったようだ。それはさておき、硬直的でなくしなやかに環境を受け入れられる素質こそが氏を導いたように感じた。2020/06/07