内容説明
よみがえるのは―あたたかい風景。母との想い出。生きていることへの感謝を祈らずにいられない。童話作家あまんきみこ初めてのエッセイ集。
目次
1 ある日 ある時(花を摘む;天気予報;自転車をおりる ほか)
2 思いだすままに(あじみの手伝い;原風景;思いだすままに ほか)
3 この道より歩く道なし(一冊の絵本から;幼ものがたり;夢、あれこれ ほか)
著者等紹介
あまんきみこ[アマンキミコ]
阿萬紀美子。1931年旧満州に生まれる。日本女子大学児童学科(通信)卒業。与田準一に出会い児童文学の道にはいる。坪田譲治主宰の「びわの実学校」に「くましんし」を投稿したのが掲載される。『車のいろは空のいろ』で、日本児童文学者協会新人賞、野間児童文芸推奨作品賞を受賞
松成真理子[マツナリマリコ]
1959年大分県に生まれる。京都芸術短期大学卒業後、広告、雑誌等で活躍。絵本『まいごのどんぐり』で、児童文学新人賞、紙しばい『うぐいすのホー』で五山賞奨励賞画家賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MI
111
図書館で偶然見かけた、童話作家のエッセイ集。小さい頃、空き地で野の花を摘んで、花かんむりを作ったことや空をみやげた夕焼けなど情景が浮かぶ。あまんさんのことばはとてもやさしくつつん見込んでくれる。19歳の時に母を癌でなくし、幼い頃の記憶、母のおもかげがステキだった。なかでも立原道造の詩がよかった。 美しいものなら ほほえむがよい 涙よ いつまでも かわかずにあれ 陽は 大きな景色のあちらに沈みゆき あのものがなしい 月が燃え立った 大人になると空を見上げることが少なくなったとしみじみと思う。心がほっとする話2023/01/29
はる
74
あまんきみこさんが自身の子供の頃の思い出や、日々の生活などについて綴ったエッセイです。何てあたたかい世界。あまんさんの花や木といった自然や、子どもたちに向ける眼差しは限りなく優しい。この優しい世界にずっと浸っていたい気分です。特にお母さんとの触れ合いを描いたエピソードは愛情に溢れていて胸がいっぱいになりました。松成さんの淡い挿絵も素敵です。2018/07/05
ぶんこ
62
あまんさんのエッセイは初めてでしたが、とても良かったです。幼い頃の思い出が豊富にあるから、素晴らしい本をたくさん創りだされたのでしょう。お母さんとの味見の役割、野の花を摘んでいて学校に遅刻した話。どれも自分には持てなかった思い出だなぁと切なくなったりもしました。特に母親になってからの夢には、自分が子どもなのに、自分の子どもたちが一緒に現れてくる事。その下のお子さんが高校生になってからは、夢にお子さんが現れなくなって、子の自立を知ったという話には母の子への思いの強さに感動しました。絵も素敵で手元に置きたい。2018/07/18
よこたん
51
“幼い子どものときに出会った情景、風景、言葉は、心の芯に深くしまわれ、時を経てひらりとよみがえってくるー、そしてその人を励ましたり癒したりするー、” 静かに、でも、力強くわき上がる思い。私も、大切に抱え続けている数々の思い出たちに、どれだけ励まされてきたことだろう。決して後戻りではない、前へ進むための踏切板となって、根っこから支えてくれるもの。絵本かと思っていたら、淡くふんわりとした絵に包まれた随筆集だった。「あじみの手伝い」の優しい気配、「里帰り」の甘やかな響き、そして「花びら笑い」。言葉が美しい。2019/04/03
ムーミン
47
「幼い子どものときに出会った情景、風景、言葉は、心の芯に深くしまわれ、時を経てひらりとよみがえってくる。そしてその人を励ましたり癒やしたりする。生きているということは、なんと不思議で有難いことでしょう。」P.382021/11/20