出版社内容情報
夜ごとにおとずれる月が語る、人生の哀歓と異国の風物詩。名画と名訳が奏でる三十三の掌編集。 中央児童福祉審議会推薦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てんちゃん
39
幻想文学?叙事詩?月が語りかけてくれる33夜の物語。自分の理解力を越えてしまい、流れるような字面を読むも全くイメージが掴めない難解な話もあった。しかし読後の余韻は秀逸。『絵のない絵本』というものの、添えられたいわさきちひろの挿し絵が作品のイメージにピッタリで美しかった。解説に描かれたように、「無邪気なもの若々しいものへの賛美と、寂しく生きて死んでいく人々への深い同情」「満たされぬ恋の思いや、劇場作家の報いられぬ執念」が詰まっている。2018/02/28
Rie
33
月が語る。世界のある出来事。介入するのでなく見たことを語ることで哀しさ、優しさ、楽しさ理不尽さなどふとしたことで気づかされる。あなたのこと、わたしのこと、空から月が覗いている。良いことも悪いことも。2016/02/08
mntmt
24
月が見てきたことを語る、全三十三夜。月だから、世界中を巡っています。(日本のお話はなかった。)まだロウソクやランプの時代。月が照らす人々の小さな物語は、一つ一つが素朴で無垢で美しいなと思いました。2016/04/02
コニコ@共楽
13
「絵のない絵本」に岩崎ちひろが絵を描いている絵本があると教えてもらった。この本は、ちひろ自らの強い希望で1966年に絵本化され、鉛筆と墨のモノトーンで情感豊かに描き出されたものだ。人生の冠婚葬祭、悲喜交々を綴った連作短編は、モノトーンの詩情深いちひろの絵と一体になり、月の夜空に連れて行ってくれた。フランス王の玉座で果てた貧しい少年、美しい森で祈りを捧げる貧しい少女、愛した人のお墓地に佇むせむしの道化師、そしてラストの少女の願いも愛らしく印象的だった。2020/01/29
セシル
7
【再読】もう随分以前に購入した宝物のような存在です。装丁も素晴しい。タイトルは「絵のない絵本」ですが岩崎ちひろさんのイラストがある事でより世界観が膨らみます。他社からも文庫が幾つか出ていますが翻訳が難解でなく読みやすくて気に入っている。文庫がちょっと読みにくい…という方にはこちらをお奨めしたいです。内容は屋根裏に住む貧しい画家に、幼馴染の月が夜毎訪れては世界中で見てきた事を語り、それを画家が書きとめた形の短編集です。異国を旅したような気分と人魚姫で感じた時の悲しい欠片…人間への悲哀に満ちた美しい童話。2010/08/06