創元SF文庫<br> 暗闇のスキャナー

創元SF文庫
暗闇のスキャナー

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  • サイズ 文庫判/ページ数 414p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784488696092
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

どこからともなく供給される麻薬、物質Dがアメリカ中に蔓延していた。覆面麻薬捜査官アークターは、捜査のため自らも物質Dを服用、捜査官仲間にも知らさずに中毒者のグループに潜入し、彼らと日々を共にしていた。だがある日、彼は上司から命じられる。盗視聴機を仕掛け、アークターという名のヤク中を―彼自身を監視せよと。彼はその命令に従うが…。ディック後期の傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

マッピー

14
うーん、最近とみにこの手の現実と妄想の境界があやふやで、死と暴力が隣り合わせのような作品が苦手だ。いろいろと忙しかったせいか、読書の体力が落ちてきているのか、自分の趣味嗜好にこだわりが強くなったのかはわからないが、苦行の読書だった。『時計仕掛けのオレンジ』のような世界で、そこまでの鋭さもなく、覆面麻薬捜査官である主人公の正体がばれようがどうしようが、どちらにしても自業自得ではないかと思えばもう、物語の先なんてどうでもいいような気になってしまう。なんか、ごめんなさい。2023/10/21

しまうま

12
退屈な時間が全くなかったといえば嘘になるけど(むしろ退屈な時間のほうが多かったのかもしれない、それは僕があまり真面目じゃなかったからだと思う)、話が淡々と進む裏で何かが動いている感覚は、とても奇妙でスリリングな時間だった。どこかから供給される物質Dを自ら服用する覆面麻薬捜査官のボブ・アークターが、自分の監視を上司から命じられるというあらすじだけ読めば、体裁の良いSFを楽しめるかとも思ったけど、話はそんな単純なものでもなかった。時間はかかったけど、読めてよかった。2019/08/17

白義

12
ヴァリスと物語としては似た構造を持ち、ヴァリス三部作以前のプレ・ヴァリスとして捉えることも出来ると言われる傑作だが、しかしヴァリスや他のディック作品のような怪しい神学への逃避、超越への飛躍はここにはない。SF要素はあれど徹頭徹尾現実に立脚し、ドラッグを楽しむ哀しき人々とその日々のツケが回ってきて人間がぶっ壊れる様がありありと優しき同情を込めて描かれている。その現実を甘受させるのは宇宙の真実などではなく、たまに飛び出すラリったユーモアくらいのもの。それゆえにこの小説は他のディック作品とは違う特異な位置にある2017/12/14

Hepatica nobilis

8
ディックの悪い癖である「超越」がなく救いがない。SFにつきものにガジェットも最小限で、普通小説に近い内容。中毒者たちの譫妄ぶりは妙に鮮明できっと実体験から来ているのだろう。それに最後のモチーフはノヴァーリスなのだろうか。

羊の国のひつじ

7
あとがきにもあったけど、他のディック作品とは一線を画している。ディック感覚は大いに楽しめるが、神学的要素も少なく、SF的要素もほぼなく、淡々とヤク中たちのラリった会話が繰り広げられるので、人によっては読みやすくはないかもしれない。主人公がどんどん自分を見失い、現実がわからなくなる怖さはゾッとするし、ディックだなあと感じる。あとがきで最高傑作と述べられているのはわかるような気もする。2020/12/23

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