内容説明
ご存じだろうか。“魔が差す”という瞬間は、たぶんどんな人にも一度や二度は訪れるものなのだ。そう、犯罪行為などとは地球とアンドロメダ星雲くらいにかけ離れている駒子にさえ、その瞬間は突然やってきたのだから。クリスマスにひいた風邪が軽快し、空はすこんと晴れ上がった大晦日、出かけたデパートであるものに目を奪われたばかりに、息が止まりそうな思いをした駒子は…。
著者等紹介
加納朋子[カノウトモコ]
北九州市生まれ。文教大学女子短期大学部文芸科卒業。92年、「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。95年、「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiro
153
加納さんのデビュー作『ななつのこ』が面白くて、『魔法飛行』を読んだが少しがっかりだった。しかし、読メの中で薦められてシリーズ3作目も読むことにした。『スペース』は書簡体小説のためもあってか、あまり面白みを感じず惰性で読んでいて、まったく叙述トリックに気付かなかった。完敗でしたw 一方、『バック・スペース』は、シリーズのスピンオフ作品として、外から駒子と瀬尾が見れて、これはこれで面白かった。でもやはり、読者として期待するのは、駒子の周りでおこる謎を瀬尾が解くというシリーズの王道をいくシリーズ完結編だと思う。2012/10/19
kishikan
142
短大生駒子さんシリーズ3作目。「ななつのこ」「魔法飛行」の圧倒的構成力と巧みな文章に心惹かれ読み続けてきました。主人公駒子さんの生活を通した乙女心の揺れ、そして文通相手の瀬尾さんの謎解きなど、加納さんは2作共異なる構成で楽ませてくれました。しかし驚くなかれ、「スペース」はまたまた異なる構成。今回は、駒子さんも瀬尾さんも裏方に回り(途中までは駒子さんは?って思わせます)、表舞台は駒子さんのお友達。ラストは、心のよりどころ(スペース)を探り当てる、愛と感動に溢れる美しい物語です。前2作を凌ぐ出来、素晴らしい!2012/02/20
ダイ@2019.11.2~一時休止
134
駒子その3。ひとつの物語の表と裏って感じの2編。怪しい手紙はうまくまとまったが、ハヤミの解釈はそれであってるの?2014/09/17
ユメ
132
対のような表裏のような二つのラブストーリー。二篇の繋がりがまた美しいミステリーになっている。自分が空っぽな人間なんじゃないかという焦りが私にもある。でもそれが、わざわざバックスペースキーを打って作り出した、これから未知のもので埋めていくスペースだとしたら?謎解きはもちろんのこと、そんな答えをそっと差し出してくれるから、このシリーズが好きだ。駒子と瀬尾さんが素直に羨ましい。実際のところ涙は流していないのに、思い切り泣いた後のように心地良い清涼感と安堵感のある三冊目だった。四冊目、いつになっても待っています。2015/06/05
mariya926
112
『ななつのこ』と『魔法飛行』の続編です。最初は長く続く手紙で、駒ちゃん相手に書いてると疑わずに読んでいましたが、事実が分かると世界がひっくり返ります。忘れてましたが加納さんはミステリー作家でしたね。そしてスペース(場所、空間)の意味が分かりました。次のバック・スペースは『少しぐらい、後戻りしたっていい、やり直したっていい。まったく別な、新たな文字を打ち込むことだってできる』人生を生きる女の子たちの話です。瀬尾さんが考えていたイメージと違いました。最後は自分の大好きな人が増えていっているのがとても素敵です。2018/07/11