内容説明
才気煥発なポオを協力者に、士官候補生の遺体損傷事件を調べる元辣腕警官のランダー。だが、そんな彼らの前に、第二の死体が現れる。そして、令嬢リーへの愛に全霊を捧げるポオとランダーの関係にも、暗雲が立ちこめはじめていた。内なる孤独を抱えるふたりの男が、陸軍士官学校を震撼させた殺人事件に見出した真実とは―。19世紀アメリカを舞台にした、圧巻の歴史ミステリ大作。
著者等紹介
山田蘭[ヤマダラン]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
136
ミステリの父 とでも言える作家へのオマージュであり、クライマックスでの氷や岩が崩れ落ちる様子はアッシャー家の崩壊を彷彿させたのだが...、その先が凄かった。知らずにいた悲劇や痛ましさ。そして、いなくなってからの存在感の強さは、逝ってしまったものより、やはり生きている者が強かった。その謎を増す逞しいまでの存在感に、オマージュを超えた創作力を感じる。ミステリ好きな読友さん達がすすめてくれただけあるなと納得。おすすめ。2018/11/09
ペグ
73
再読にもかかわらず胸を締め付けられる様な読後感。退職警官ガス・ランダーは陸軍士官学校で起きた事件の捜査を依頼され助手に指名したのがエドガー・アラン ポーだ。ポー好きなわたしは、それだけで前のめりになって貪る様な読む。熱を帯びたポーの手紙には捜査に関係のない恋の想いも記されて、詩は後の「大鴉」の草稿か?最後の数ページに涙する。オススメの一冊。2018/02/19
GaGa
58
正直賛否両論になる結末。しかし私は買う。読み物として非常によく出来ている。そして実に読ませる文章で書かれている。中盤を過ぎたあたりからはぐいぐい引き込まれるようにして読んでいった。それだけでも良書としての価値はある。で、映画にして欲しいなあ。エドガー・アラン・ポーがミステリーにかかわると言うだけでも面白いから。2011/10/30
財布にジャック
57
詩情豊かな儚く美しいミステリーですが、テンポが遅く謎解きを急ぐミステリーファンだと、かなりいらいらしていまうかもしれません。しかし、ポオの活躍や、終盤の展開は、決して読んで損はないものでした。ラストまで読んで、今しみじみとこの物語の凄さを噛み締めています。上巻から感じていた不穏なモヤモヤの正体は、犯人が判った段階ですっきりとしました。2012/04/16
藤月はな(灯れ松明の火)
42
捜査を調査するために手を組んだランダーとポー。だがリーに恋したポーの不穏な言動や過去の疑惑などが絡まり、ある決裂が起きてしまう・・・。出逢う時が違っていたら良き関係だっただろう彼らが痛み分けのような別れになってしまったのが痛ましいです。そしてポーの冷酷な養父の描写と「アッシャー家の崩壊」めいた幕切れの凄烈さに息を呑みました。自分にとって大切な人の「亡霊」と言う名の薄いベールが覆い、それが「己」となって行動している様な不安感と一抹の安らぎを覚えるような作品でした。2013/03/10