内容説明
薔薇、香水、宝石、シャンソン、百科事典、コンピューター…ハネギウス一世の偏愛する美の世界に、1983年、田中貞夫と寺山修司、かけがえのない二人の死がもたらされた…。『香りの時間』『墓地』『地下鉄の与太者たち』『溶ける母』を収録。審美家・中井英夫のダンディズムに彩られた横顔とまなざし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒロミ
61
何度目かになる再読。大好き。中井英夫と言えば、三島や澁澤の知己で三鷹時代の太宰を帝大生のとき訪ね「先生。死ぬ死ぬっていつもおっしゃいますけどいつ死ぬんですか」とズバリ訊いて太宰をへどもどさせた作家である。さすが「虚無への供物」の作者だけあり、随筆集である本書も倒れそうなほど耽美である。鏡花など各作家の書評も収録されていて嬉しい。嶽本野ばらが「中井英夫の作品を読むと澁澤でさえ人の良い田舎者に見えてくる」と語っていただけあり、怜悧な美学に貫かれた端正な美文に浸り、めくるめく薔薇と香りの園へ旅立ちたい。2016/07/24