海外文学セレクション
千年紀の民

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  • サイズ B6判/ページ数 301p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784488016500
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

ヒースロー空港で発生した爆破テロ。精神分析医デーヴィッド・マーカムはテレビ越しに、事件に巻き込まれて負傷した先妻ローラの姿を目撃する。急ぎ病院に駆けつけたが、すでに彼女の命は失われていた。その「無意味な死」に衝撃を受けて以降、ローラ殺害犯を捜し出すためデーヴィッドはさまざまな革命運動に潜入を試みるが…。新たな千年紀を求め“革命”に熱狂する中産階級。世紀のSF作家バラードの到達点。

著者等紹介

バラード,J.G.[バラード,J.G.][Ballard,James Graham]
英国を代表するSF作家。1930年、上海生まれ。「人間が探求しなければならないのは、外宇宙(アウター・スペース)ではなく、内宇宙(イナー・スペース)だ」として、SFの新しい波(ニュー・ウェーヴ)運動の先頭に立った。濃縮小説(コンデンスト・ノベル)と自ら名づけた手法で書き上げた短編を発表し、その思弁性に富んだ著作は多くの読者を魅了した。2009年歿

増田まもる[マスダマモル]
1949年、宮城県に生まれる。早稲田大学文学部中退。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

145
帯に「バラードの到達点」とあるがまさにそう。『ハイライズ』より深くテクノロジー社会の歪みや矛盾を晒そうとしている。一歩引いて考えれば狂気の沙汰である現代の暮らし。なら、その矛盾をついて正そとするのは正気なのか。テロはどこまでやれば罰すべきものとなるのか。バラードは読者に考えさせる。めちゃくちゃな冒頭を馬鹿らしいと鼻で笑い飛ばしても、気付くとマーカムと気持ちも行動も共にしている自分。翻弄され、最後の数行でガツンときた。現代の心の拠り所のようなアドラーも揶揄されているようでおかしい。バラードを一冊ならこれ 2017/06/05

扉のこちら側

86
2016年1079冊め。【243/G1000】9.11後に書かれた作品であり、著者はテロリストらが中等度以上の教育を受けた、貧困層ではないことに着目している。抽象的な概念のために死を選ぶことができる者たちの起こす事件はテロなのか革命なのか。作中ではロンドンの高級住宅地に住む人々の革命を描く。家のローンや子どもの教育で首が回らなくなっている彼らは、世界を変えようとするが果たして自らの行いをどこまで理解していたのか。一方で小児科医のグールドの印象は鮮烈だ。(続)2016/12/15

NAO

60
革命やテロというと、貧しい人々、虐げられた人々が自分たちの世界を変えるために起こすものと考えられてきたが、中産階級が熱狂する革命はこれまでの革命とどう違うのか。社会に対して不満を訴える「意味のあるデモ」の中に紛れ込む「無差別で無意味なテロ」には戦慄を覚えたが、主人公の動機やどんどん深みにはまっていくことに対する心情が全く読めず、彼が狂気に向かっていくようでなかなか怖かった。2016/08/22

GaGa

41
2003年に発表された日本初訳の長編。これ以外では翻訳されていない小説はあと長編が一つだけだそうで、それも東京創元社から刊行予定とのこと。「コンクリート・アイランド」「クラッシュ」「ハイーライズ」の三部作にほぼ追随する内容で、比較的読解しやすい内容。ただ、テロや革命など、外部の出来事の影響を受けてバラードが書いた作品とするならば案外珍しいのでは?上記三作に比べ毒が薄くなった気がするも、なかなかの作品。翻訳者の解説にあるが、これを読んだ後、「夢幻会社」や「終着の浜辺」を読むと印象が変わるかも。2011/05/28

藤月はな(灯れ松明の火)

29
父は「嘗ては貧富の差今は乞食が法律に違反するとされ、貧富の差が分からなくなったな。貧乏でも一定ブランドの服を着ていて人々が一見は画一化して見える」と食卓で言った。この作品の一見、差がないように見える中産階級は鬱屈を晴らす為のセラピーの一環として過激なデモを行う。でも私には映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』で描かれたRAFにも感じたように人々を無知で可哀想と下に見て、空っぽで偽善的な啓蒙活動をするテロリストにしか見えなかった。無慈悲且つ独善的な革命家がケイ・サッチャーなんて皮肉なネーミング。2016/09/02

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