出版社内容情報
腐りきった帝政を打破し、ここに人類の理想郷を築かねばならない――。歴史の奔流に命を賭して抗った人々が織りなす革命の実像を、SF界の鬼才が鮮烈に描く。
内容説明
腐りきった帝政を打破し、ここに人類の理想郷を築かねばならない。歴史の奔流に命を賭して抗った人々が織りなす革命の実像を、SF界の鬼才が鮮烈に描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mm
25
チャイナ・ミエヴィルの「都市と都市」はとにかく圧倒的に面白かった。同じ作者の「物語ロシア革命」ってどんな感じ⁇と軽く読み始めたのは間違い。これは、覚悟を決めて、ノートを片手に、時間を確保して、ガチで読むべきでした。。創作したエピソードの挿入はなし。簡単に解釈を挟むこともなし。事実に忠実であるからこそ、タッチの差で流れに差が出たり、その状況で人が取る行動の矛盾が出たり、フィクションじゃ考えつかない混沌。革命によって何を成そうとするのかの統一見解の無いまま「変化」を求めて、個人個人はありえないほどまっしぐら。2018/05/06
em
20
「それでもやはり、一〇月は否応なくスターリンにつながったのか? この問いかけは古くからあるが、今も大いに生きている。」革命真っただ中の混乱はいつもわかりにくいところ。世界革命を前提としていたレーニンは、あの時点でロシアに革命の準備はできていなかったと振り返る。エピローグに置かれた列車と転轍機のイメージ。がちゃんとレールを切り替える転轍機のことを考える。歴史にifはないというあの慣用句は本当に、絶対的な真理なのだろうか。今の私には、後ろにも前にも無数のifが点在し、並走しているように思える。2018/02/05
maja
17
SF作家ミエヴィルの目を通して1917年2月革命より10月革命までの激動の1年を追う。語り口の独特さと臨場感の熱気に引きつけられていく。次々と恐ろしいスピードで生まれてくる錯綜した支配と臨時委員会やあらゆる奔流に人物の名前なども埋もれてしまいもう記号でしかないように感じる。そしてエピローグで語られる10月革命後。その後を知る100年後の我々は本書の詳細な史実を知り、あの奔流のなかではほんの少しの角度でまったく違ったものになったかもしれない世界のことを考えてしまう。 2019/09/24
チェアー
17
歴史を変える選択肢は、実は目の前にある。昔もいまも。レーニンが、トロツキーが、ケレンスキーがまだ見ぬ未来に心を揺らし、惑い、決断する。名の残らぬ多くの人々も含めた一つひとつの決断が、歴史をつくる。少しでも違う選択をすれば、ロシアも世界も違っていたのか。どう違ったのかを考えるより、何がその選択を導いたのかを考えたほうが役に立つ。ロシア革命を知り、考えることはいまの、明日の選択を考えることだ。2017/11/09
春ドーナツ
14
本書は1917年2月から始まり10月に終わる、余りにも複雑で激動の物語である。色々な立場の人々が其々色の異なる卵を一斉に壁にぶっつける。そこにはポロックの《ナンバー5, 1948》のようなものが現出するだろう。ある色の道筋を追おうとしても無駄だ。途中でそれは消失するか、別の色に、あるいは混色の果てに黒という虚無が広がっているのだから。革命に内在する悲しみは転覆させたものを理念に変換する為の絶対的な「答え」が存在しないところにあると思う。無秩序の先に待っているのは、スターリニズムや毛沢東の文化大革命なのだ。2018/02/14