内容説明
ならば、私が、吹いてやる。私の肺は空気を満たし、私の内腔はまっすぐにチューバへと連なって天へと向いたベルまで一本の管となり、大気は音に変わって世界へと放たれるのだ―。第23回太宰治賞受賞作の表題作の他、渾身の書き下ろし作品2編を収録する。期待の新人の最新作品集。
著者等紹介
瀬川深[セガワシン]
1974年岩手県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。同大学大学院博士課程修了。小児科医・医学博士。「チューバはうたう―mit Tuba」(「mit Tuba」を改題)で、第二十三回太宰治賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やっさん
91
★★★☆ 題名、装丁、冒頭の学生時代の回顧などから、てっきりチューバを介した青春小説なのかと思って読み進めた。しかし、実際は思考原理や行動哲学の描写だらけで、あまりの理屈っぽさについ笑ってしまった。2022/11/21
優希
68
26歳のチューバ吹きの物語に鳥肌が立ちました。音楽の描写がとても素晴らしかったです。吹奏楽でもマイナーな楽器ですが、何と言っても低音が魅力的な楽器。吹奏楽経験があるので、楽器を演奏するときの気持ちはとても共感します。自分が演奏する楽器の音が深く心に入ってくるのは快感なこと。主人公はチューバを本当に愛しているのが伝わってきました。他の2編、南洋の島への旅行記『飛天の瞳』と手作りプラネタリウムの話『百万の星の孤独』も感動しました。島の空気や星の映像が伝わります。詩的な文章が印象に残ります。2015/03/23
なゆ
65
久しぶりに、チューバの音を読みたくなった。ただただ、“私はチューバ吹きだ”ということを淡々と延々と語り続けるこの話を。「羊と鋼の森」とか「蜜蜂と遠雷」とか音を細かにつぶさに文字で読むごとに、思い出しては読みたくなっていた。主人公の私の名前さえどうでもいい、チューバとの関係さえ伝われば、とでも言いたげな武骨さがいい。そして全体的にブツブツと熱くないからこその、あのライブの熱狂が。ああ、読むたびに今更ながら、楽器とかやっとけばよかったと悔やんでしまう。2018/05/18
な〜や
52
【図書館本】表題作含め3作品が収められた短編集。中学時代、吹部でまさにチューバ担当だった私は勿論表題作目当てに読んだ。うん……何だか、重厚というか哲学的というか……純文学読み慣れてる人ならサラッと読めるのかな……。他人から何と言われようとチューバが好き、チューバを吹けて良かったって気持ちだけは主人公に共感出来る。けど、ここまで小難しい事チューバ経験者って皆考えてるものなのか?何だか文章全体が大学受験の現代文の"小説"の問題文として出てきそうな感じの作風で正直自分好みでは無かった……ごめんなさい。2014/06/01
ぶんこ
40
音楽ライターさんが講師の、とても面白かった講演を聞きに行った日比谷図書館で借りてきた本。 作中の音源探しをしましたが見つからず、モデルがいたという事で、実在してないと後で知りました。 文体が苦手で、読み辛かったのですが、「百万の星の孤独」が切なくて一番好きでした。 一つの事に熱中できるのは素敵だと思いました。 2015/04/01