内容説明
夢の彼方にたゆとう「東方」の記憶―神秘の薄明の中、驚異の展開で圧倒的感銘を喚ぶ幻想譚「朝の女王と精霊たちの王ソリマンの物語」等の挿話を含む壮麗かつ巨大な長篇『東方紀行』を新訳でおくる。
目次
東方紀行(序集 東方へ;カイロの女たち;ドルーズ派とマロン派;ラマダンの夜)
補遺
記事
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
46
自身の中東旅行を下敷きにした『東方紀行』を収録。「ぼく」の東方への旅は、「オリエント風の格好」で人々の生活、風俗に触れる旅。それは空想の東方、エメラルドの椰子や黄金の宮殿に住むカリフを、馬車が行き交う街区や列強の介入を許す君主に替えることでもあり、手紙には「夢」の喪失を嘆く言葉も。でも現実の土地に触れそれを「再構築」したからこそ、作者は夢と現実の狭間からこの『東方紀行』を顕現させ得たのだと思います。観察や旅の日々を語る中から揺らめき出る数奇な幻想譚、彼の「永遠の美の隠れ処」に目を奪われるばかりでした。2019/07/03
Mark.jr
1
Gerard de Nervalの全集3巻は一冊丸ごと「東方紀行」で占められています。パリを出発して、ウィーン、ギリシャ、エジプト、レバノン、イスタンブールへと至る旅は、単純に詳細な旅行記としても読み応えがありますが、所々で神秘的要素が入り幻想文学性を帯びるのが、著者の面目躍如といった感じです。野崎歓氏が翻訳されてますが、どこかの文庫で新訳で復刊したりしませんかね...。2020/09/26