内容説明
碩学の思考を跡づけるために、初刊本を底本として刊行順に編纂、改版等で付加された文章を網羅する、はじめての画期的全集。実践的な農政改革論『産業組合』、講義録『農政学』『農業政策学』、民俗の探求『後狩詞記』『石神問答』。明治45年度講義録と考えられる『農業政策』を「第2巻補遺」として収録した。
感想・レビュー
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てれまこし
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農政官僚としての柳田は、国の視点から農業の徹底した合理化を唱えるバリバリの近代主義者である。ドイツ流社会政策学派の第一世代に属し、自由放任主義を批判、国家による市場介入を正当化するが、同時に国家主義からは距離を置く。まだ、英国風の自由主義の影響も濃厚なんである。農民を自然の一部としてではなく、自然を支配する文明の主体として捉えるがゆえに、強制よりも教育を重視、農民の自治能力の育成を強調する。他方で、合理的な社会観からは排斥されるものにも興味を持つのだが、民俗学も上記の点では農政学の近代主義を継承している。2018/07/25