出版社内容情報
フグ、キノコ、火山ガス、細菌、麻薬……自然界にあふれる毒の世界。その作用の仕組みから解毒法、さらには毒にまつわる事件なども交えて案内する。
田中 真知[タナカ マチ]
内容説明
フグ、キノコ、トリカブトなど動植物に由来するものから、鉱物、火山ガス、麻薬に至るまで―世界はさまざまな毒であふれている。しかし、毒という実体は存在しない。ある物質が毒になるかどうかは関係性で決まるからだ。毒はどのように作用するのか。最強の毒は何か。人間は毒とどうつきあってきたのか。毒をめぐる犯罪や、生命進化との関係も交えて案内する恐ろしくも魅惑的な毒の世界。
目次
第1章 毒のサイエンス
第2章 動物毒の秘密
第3章 植物毒の秘密
第4章 鉱物毒・人工毒の秘密
第5章 麻薬とは何か
第6章 毒の事件簿
第7章 毒と生物の進化
著者等紹介
田中真知[タナカマチ]
1960年生まれ。作家・翻訳家。慶應義塾大学経済学部卒。科学ライター等を経て、8年にわたりエジプトに滞在。アフリカ・中東各地を多様な視点から取材・旅行。そこで出合った毒虫や有毒植物、熱帯病などに苦しめられた経験から、毒をめぐる科学や文化に関心を抱く。2016年『たまたまザイール、またコンゴ』(偕成社)で第一回斎藤茂太賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
126
化学名がチラリと見えただけで腰が引ける苦手分野だけど、これは読みやすかった。見れば作者は私と同じ経済学部。理系ほど踏み込まず、体系だった説明がわかりやすい。毒の種類は様々あるのはわかったが、興味をもったのはそれをどうデトックスするか。石川県のフグの毒の抜き方とか、それが可能なことにも驚くが、口にする人にも感心する。実例としては、フランスの毒殺魔の公爵夫人。この人がモデルになって、デュマのモンテクリスト伯に出てきたのかしら。麻酔とヘロイン、モルヒネの関係も面白い。賢くなった気分。2017/04/19
kinkin
80
毒というけれどさて何か?という疑問に応えてくれる本。身の回りに存在するあらゆる物質は毒になりうる、毒か薬かという違いは物質の性質の問題ではなく人間側の用い方の問題と書かれていた。何事も過ぎたるは毒ということか。一章では毒の定義や種類、二章以降は動物・植物、鉱物・人工物の毒について、他麻薬や毒の事件簿、毒と生物の進化について書かれている。ヤドクガエルやイモガイなどの小さな生き物から発する毒で普通の人が死んでしまうことを考えると人は様々な自然破壊を日々行っているくせになんと弱い生きものだと感じた。図書館本。2017/01/05
yumiko
62
動物毒(フグやハチ)、植物毒(トリカブトやニコチン)、鉱物毒・人工毒(ヒ素やサリン)から麻薬まで、毒と呼ばれるあらゆるものを網羅した真面目な一冊。教科書のようにあっさりした説明は好みが分かれそう。個人的には知りたいことを端的に知ることができて良いと思った。文庫化に際し加えられた部分がとても面白く、生き抜くための生物の戦略にほとほと感心。毒というものが生物の進化にここまで深く関わっているなんて!ちょっと残念な題名からは想像できない「恐ろしくも魅惑的な毒の世界」へどうぞお越しませ!2016/12/05
たまご
27
いろいろな毒(生物が産生するもの,金属鉱物,人工物),麻薬などを丁寧に説明し,毒を使った事件も紹介され,さらに最後,生物の進化,そして現在の抗生物質の使用方法にまで提言した,幅広ーい本です. やー,面白かった. 生物毒がこんなにも強い.でもそこから薬剤に応用されていくのは,人間の知恵ですよね.それに比べて人工物の悪意に満ちたことと言ったら.自然の懐の深さと人間の狭小さを感じましたです.2017/02/02
流言
26
結局、便利で都合のいい毒はないということか。殺人事件のトリックを考えながら読んだが、経口摂取で殺すのは難しいのだなあ、と改めて知ることができた。経口摂取では効果が不安定になりやすいし、当然胃酸で薄められるのだから基本的には注射などで体内に直接撃ち込んだほうが効果が高い(故に毒矢で為留めた得物を食肉にしても問題が出にくい)、というのは言われてみれば当然の話であるが、言われるまで気づかない内容であった。どんなことも一回で確実に決めようとするよりも、毎日少しずつ積み重ねて毒を盛り続けて確実に毒殺をするのがよい。2017/08/22