出版社内容情報
幻想と現実が接近しているこの世界で、できるだけリアルに生き延びるためのラカン解説書にして精神分析入門書。カバー絵に荒木飛呂彦。
内容説明
ストーカー、リストカット、ひきこもり、PTSD、おたくと腐女子、フェティシズム…「現代の社会は、なんだかラカンの言ったことが、それこそベタな感じで現実になってきている気がする」。電車内の携帯電話の不快なわけは?精神病とはどういう事態か?こうした問いにラカンはどう答えてくれているのか。幻想と現実がどんどん接近しているこの世界で、できるだけリアルに生き延びるためのラカン解説書にして精神分析入門。
目次
なぜ「ラカン」なのか?
あなたの欲望は誰のもの?
「それが欲しい理由」が言える?
「こころ」はどれほど自由か?
「シニフィアン」になじもう
象徴界とエディプス
去勢とコンプレックス
愛と自己イメージをもたらす「鏡」
愛と憎しみの想像界
対象aをつかまえろ!〔ほか〕
著者等紹介
斎藤環[サイトウタマキ]
1961年生まれ。医学博士。爽風会佐々木病院診療部長。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、ラカンの精神分析、「ひきこもり」問題の治療、支援ならびに啓蒙活動。漫画・映画等のサブカルチャー愛好家としても知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
61
四年ぶりの再読。この精神分析・思想家の概念を改めて学ぼうと思い、読みやすかったこの本を手に取った。しかしまあ、ほとんど忘れているのに愕然。初心者向けにかなり分かりやすく噛み砕いて例をあげて説明してある。ただ個人的に感じるが、この語り口のせいで、軽く流してしまいがちになるので、読みながら普通の文に言い換える作業をしていた。また、精神分析の本で定番の話題ばかりなのだが、興味が無く、まったくの初心者であると読み過ごしてしまう。ラカンの入門として最適な本なのは確かだが。表紙絵は荒木飛呂彦のだと今回初めて知った。2016/11/07
Aster
40
斎藤環先生の本を連続で読みました。ラカンについて知りたかった自分にとっては最高の入門書になった。恐らく全体の2.3割も理解していないけれど凡そのエッセンスは理解出来た。精神分析入門(フロイト)を読んでいるおかげかもしれない。去勢、ファルス、享楽、三界、対象a…、これらの偏見が取れたというのも得たものの中では大きい。ラカン理論ではエディプスや現実界をコントロール不可とするということが重要なように思えた。棚にはラカン関連の本が積んであるのでこれから読んでいきましょー2019/09/24
KAKAPO
40
曖昧な記憶と照し合せる限り『生き延びるためのラカン』は、20代の頃、伊丹十三さんと岸田秀先生との対談『哺育器の中の大人』を読んだこと以来の衝撃だった。「シニフィアン」「シニフィエ」なんて言葉が出てくるもんだから、丸山圭三郎さんの『言葉とは何か』と『ソシュールを読む』の事項索引を引きながら読み進めた。私に最も恩恵をもたらしてくれたLectureは、10「対象a(タイショウアー)をつかまえろ!」だ。「対象a」とは「欲望の源泉」のこと…決して確かめることは出来ないが、求めてやまない「恋人の心」のようなものだ…2017/04/16
西
34
難解だけど面白い。どこまで理解出来ているか心もとないけど…。どこが、と言われると困るが、自分はこういうのが好きだ。内容を語ろうにも書けないので、理解出来ていないと思う。だけど面白い。他の人が書いたラカンの本を読もうかと思ったけど、多分かなりハードル高いんだろうな…2017/07/14
zirou1984
31
「日本一わかりやすいラカン入門書」との謳い文句だが、ラカンに関係なく精神分析の読み物として面白い。著者はひきこもりやおたく論関係の執筆も多いけど、自ら「精神分析は科学ではないし、治療のツールでは忘れられつつある」と言ってしまう様に精神分析の限界を認めた上であくまでツールとして出来ることを提示していて、その態度にはとても好感を持ててしまう。統合失調症で損なわれているのは「文脈」であるという言葉の通り精神分析と文学というのは相性が良く、精神分析とは人や社会を1冊の書物として読み解く行為と言えるのかもしれない。2013/07/03