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ちくま文庫
ボディ・アーティスト

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  • サイズ 文庫判/ページ数 217p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480428349
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

映画監督の夫を自殺で失ったローレン。精神のバランスを崩す彼女の前に、謎の男が現れる。まともに口を利くことができず、時間の経過も認識できないらしい男は、やがて自殺した夫の声で話し始め、知りえないはずの夫婦の会話を再現し始める。彼に引きずられるようにローレンの「現実」も変化をはじめて…。一人の女性の変わりゆく姿を透明感のある美しい文体で描いた、アメリカ文学の巨人デリーロの精緻な物語。

著者等紹介

デリーロ,ドン[デリーロ,ドン][DeLillo,Don]
1936年ニューヨーク、ブロンクス生まれ。71年『アメリカーナ』でデビュー。85年『ホワイト・ノイズ』で全米図書賞。88年『リブラ 時の秤』がベストセラーになり、現代アメリカ文学を代表する作家となった。97年『アンダーワールド』が全米図書賞の最終候補に。以後毎年のようにノーベル文学賞候補としてその名が挙がる

上岡伸雄[カミオカノブオ]
1958年東京生まれ。学習院大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

154
デリーロは初読。難解な小説だ。少なくても、古典的な物語の枠組みや方法では捉えられない。まず、物語の場が固有性を持った特定の地ではない。どこか北の方にある海辺の小さな町だ。「時間」もまた一定ではない。これは、おそらく日本語訳では伝わりにくく、時制言語である英語だと、より一層に時間感覚のゆれは大きいのではないだろうか。また、そもそもがボディ・アーティストである主人公のローレン自身の実態も不変ではない。まして、対象となる男は、夫のレイも、紛れ込んで来る男も半ばは幻のような存在なのだ。2012/08/14

マリカ

44
人間の知覚の不確かさと、心の再生を描いた静かで美しい小説。現実と人間の認識との「ずれ」にスポットをあてて、その変化を精緻に描写することで、小説の新しい可能性を切り開いている。「現実はそんなにも強烈すぎるのだろうか?」受け入れがたいほと悲しい現実に直面したとき、例えば、タトル先生のような優しい「ずれ」が心を守ってくれることがあると思う。しかし、いずれは現実を直視しなければいけないときがやってくる。その時が来るまで、「ずれ」に甘えてもいいと思う。そうやって人は悲しみを消化し、乗り越えていくのだ。2012/07/04

Vakira

35
ウィーンの画家エゴン・シーレの映画見た。27歳で没するまでの絵画と取巻く女性の物語。そしてこの文庫本のカバー絵、エゴン・シーレだ。俄然読みたくなってしまった。第1章で日常の他愛のない夫婦の会話から始まるが2章との間に新聞記事。主人公の女性ローレンの夫は映画監督だと判る。そして前の奥さんの家でピストル自殺を図っていた。初っ端から衝撃の展開。何故、自分から逃げたのか?何故、自分の家ではないのか?自分の何所が嫌だったのか?しかし、主人公の強烈な悲哀は無い。喪失感は淡々と・・・。更に多数ある部屋の何処からか・・・2017/03/03

ユーカ

34
夫を自殺で喪った、ボディ・アーティスト(身体表現者)。残された者の足掻き。「なぜあなたは彼の死に適応しなければならないのか? なぜ彼を諦めなければならないのか?」。何も死だけが僕たちを置き去りにする物ではなく、僕たちは予期せぬ次の瞬間に予期せぬ方法で一人残される。だからこそ、この、時や言語がグズグズと崩れ、身体のディテールや今まで認識していた自己が空気に溶解してゆくような、曖昧模糊とした物語に飽きもせず魅入ってしまうのか。読み手一人ひとりの孤独や、孤独の記憶にふぅっと息を吹きかけ疼かせるような物語。2015/05/27

fishdeleuze

24
難解に思えた。例えば喪失とそれに伴う心理的な変化だったり、時間と非―時間であったり、肉体と精神であったりという、二元的世界観で描かれているわけではない。それらは非時間的な流れの中で混在し、曖昧化されている。喪失があり、時間の観念を消失した奇妙な青年との時間があり、肉体を象徴するパフォーマンスであったり、青年の失踪などいくつかのエピソードが、非―時間的な不可思議な流れに基づいて記述され、幻影から目覚めるかのように時折現実へ帰り、また曖昧な時間の、単なる繰り返しと差異でしかないような世界をたゆたう印象がある。2013/07/16

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