出版社内容情報
内容は後日登録
内容説明
家族は、ひきこもり、DV(家庭内暴力)、AC(アダルト・チルドレン)などの病の温床になっているが、他のどんな人間関係よりましである。多くの家族の症例をみてきた精神科医である著者だけが書ける、最も刺激的にして、愛情あふれる家族擁護論。母子密着問題、「世間」と「家族」と「個人」、結婚の理不尽、等を通して、現代における家族のリアリティとは何かに迫る。
目次
第1章 母親は「諸悪の根源」である(家族というブラックボックス;「少女監禁事件」に見る日本的ダブルバインド ほか)
第2章 システムとしての家族(問題をこじらせがちなコミュニケーション;コミュニケーションは「情報を伝達すること」ではない ほか)
第3章 「世間」と「家族」と「個人」(負け犬は吠えるがエディプスは続く;虚像としての「世間」と「家族」 ほか)
第4章 家族の価値観(「働くこと」は「義務」だろうか;流動化に抵抗する家族 ほか)
第5章 結婚と家族の理不尽(「家族」は遺伝するだろうか;「結婚」は「幸福」の前提か? ほか)
著者等紹介
斎藤環[サイトウタマキ]
1961年生まれ。医学博士。爽風会佐々木病院診療部長。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、ラカンの精神分析、「ひきこもり」問題の治療、支援ならびに啓蒙活動。漫画・映画等のサブカルチャー愛好家としても知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
寛生
47
【図書館】本書は、かなりラディカルで斬新な《家族》への《解釈》を提示している。「誰もがけっして逃れることの出来ない理不尽さこそが、『家族』」であると臆することなく斉藤はいう。「世間」と「個人」の間に媒介として機能している「家族」には、「世間というシステム」と「家族というシステム」が互いに補完し合う関係となっていると斉藤は指摘し、例に、犯罪者の場合、世間の目はその個人でなく、先ず個人の家族に向けられるという。又、斉藤は家族論を語る上で、《働くことー労働》という概念から目を離さない。だが終わり方が少し残念。2014/06/26
KAKAPO
35
冒頭《「家族」この奇妙な共同体には、実に多くの矛盾と逆説が詰め込まれている。家族は、絶望であって希望である。》と始まって《「人間」と「家族」だけは、変われば変わるほど変わらない。~私たちはいかにして「家族」と共存しうるのか。~》と終わる本書を読み終えた後、読者は否が応でも自分の家族を見詰め、自分自身と家族のありかたについて考えざるを得なくなるだろう。私たち一人ひとりの幸不幸は、好むと好まざるにかかわらず、家族という「ほかのいかなる人間関係よりもマシな形態」の在り方に依存していることを自覚したのだから…2017/11/18
ころこ
34
本書は家族の問題を論じているので、いっけん保守的に映りますが、それは実際の親子関係だとかに当てはめ過ぎているからでしょう。家族の問題は、なぜか自分の家族にアンカーを降ろし、そのクオリアと問題のある件の家族の関係のどこに欠損があるのかと、どうしても考えてしまいます。なぜ、我々は個人の核の部分で、家族観を持っているのか。例えば、をなぜ母性父性という家族の隠喩でしか国家論を語れないのか。よく親子関係を放棄して、子供の共同で育成することが理想の国家像として論じられます。しかし、いつまで経ってもその様な観念で成立し2019/05/25
マーブル
12
便利であって不便。親密にして疎遠。多様にして単純。単純にして複雑。深淵に通ずる浅瀬。個別にして不変。はかなくも不滅。神聖かつ下品。病の元凶にして癒しの器。人は家族のもとで成長し、家族のもとで退行する。人は家族ゆえに孤独を免れ、家族のために孤独になる。生きる上では必須のものだが無くても平気で生きていける。最大の喜びと最低の憂鬱さの源。誰もが嫌悪しつつ、誰もが憧れる。倫理を育むと同時に諸悪の根源である。つまり家族は、絶望であって希望である。人間がそうであるように。冒頭で筆者が描き出す家族像。2023/10/04
ジョニジョニ
9
「就労は義務ではない」という主張は現代的で、有意義だ。働いて対価を得る、それは確かにやりたくてやっていることで、働かずに誰かの世話になって生きていくことも、豊かな社会では可能だ。生まれた家庭が裕福であればあるほど、なぜ働かなきゃいけないのか?と無駄な疑問が育つだろう。やりたい人だけ、やればいい。やりたくない人にやらせようとするのは、自分の価値観を押しつけているのではないか。まぁそれが自分のやりたいことなんだとわかっているのなら、僕とは友達にはなれないねーと離れていくだけだと思います。2021/12/04