内容説明
春画では、女性の裸体だけが描かれることはなく、男女の絡みが描かれる。男性のための女性ヌードではなく、男女が共にそそられ、時に笑いながら楽しむものだったと考えられる。また、性交場面を際立たせるために、顔と性器以外は、衣装で隠された。「隠す・見せる」「覗き」等の視点から、江戸のエロティシズムの仕掛けが明らかになる。図版豊富。
目次
いけないヌードから正しい春画へ
江戸はトランス・ジェンダー
春画の隠す・見せる(初期の浮世絵春画;「隠す・見せる」の深化;春信の色彩感覚と物語性 ほか)
春画における覗き(初期浮世絵の覗き;豆男と覗き―鈴木春信;湖龍斎と春章 ほか)
エロティックな布(春画の中の布;『源氏物語』の中の織物;中世文学のテクスタイル―『平家物語』『太平記』 ほか)
著者等紹介
田中優子[タナカユウコ]
1952年神奈川県横浜市生まれ。1980年法政大学大学院博士課程(日本文学専攻)修了。法政大学社会学部教授(近世文学)。著書に、『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫、芸術選奨文部大臣新人賞受賞)、『江戸百夢―近世図像学の楽しみ』(朝日新聞社、芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
121
春画展に合わせて読む。展覧会で、真剣に説明書きを読んできたので、ざっと目を通す。絵もほとんど展覧会で見たもので、これらが基本形だろうか。展示を見たときは、そこばかりイヤになると思ったが、なるほど、春画は裸でなく性交を見せるものとは、おそれいった。納得です。 有名な浮世絵画家は、みんなペンネームを持って春画も描いていた。個人的にあまりどぎついものは勘弁したいが、歌麿(ペンネーム不埒茎)の艶っぽい春画と、北斎(鉄棒ぬらぬら)のなまめかしい絵の幾つかには、男女の情感漂い、ひかれるものを感じる2016/02/11
Yuririn_Monroe
25
昨日、ちょうど永青文庫の春画展観てきた。春画はただエロティシズムを極めているだけでなく、背景にドラマティックな展開が描かれている点に注目することでエロさから少し遠ざかることもできる。男女の関係性、透明人間的な小人の登場、覗き見、描かれてる小物、アングルなどに着目すると春画の中に入ったような世界観を味わえる。2015/10/08
ぶんぶん
24
【図書館】春画が図書館で読めるとは。 法政大学社会学部教授時代の田中優子さんの春画に対しての考察。 春画と着物を結び付けての視点は面白い。 私は「呉服屋」がスポンサーになっているので着物の柄が大事と教わってきた。 それとは違う視点で「隠す」「見せる」の方向から攻める。 ともあれ、春画をこうまでアカデミックに扱ってくれるのが光栄です。 「蚊帳」とか「屏風」、「布団」など障害物があると「交接」部分に目が行く、とは言われてみればその通り。 単なる興味が学術まで昇華した。 田中優子さんありがとう。2022/08/19
Kouro-hou
17
春画解説本。モノクロ図版多数。うん、これは猥褻だw 堂々と店で買えてしまう辺りは芸術だw いくつかの雑誌の掲載記事や学会発表内容をまとめたもので、それぞれ「隠す」「見せる」「覗く」の意義を語っている。西洋画と違い春画は複数人で楽しみながら観る性格のものなので、絵の精神性ではなく複数点(アレ、着物の模様、背景小物、他の登場人物など)から世界に入り込む視点が重要だそうな。ふむ。歌麿や鈴木春信の凄さを再確認。逆に北斎はここでは評価が低い。最後の布のテクスタイル論が興味深かったが、ここは図版がないのがとても残念。2015/11/27
呼戯人
11
どうしても文章よりは掲載されている春画の方へ眼が行ってしまうなあ。文庫本だから絵が小さいのが難点。春画の本物を見たことがないのが残念。是非一度見てみたい。江戸時代の春画って、ほんとに猥褻だなあ。田中優子さんって、法政大学の総長なんだよね。粋な総長だね。2015/08/16