内容説明
徳川幕府から天皇への平和的な「大政奉還」は世界史的に珍しい現象である。その原動力となったのは「慕夏思想」から転じた朱子学的理想主義だった。二重の「回心」はどのように進められたのか。下巻では、山崎闇斎と「崎門三傑」の理論を震源とした、幕末の歴史の見直し運動の特徴と影響を問題史的に検討し、そのプロセスを明らかにする。
目次
歴史への「共鳴・掘り起し現象」
聖人から極悪人へ
「輸入史観」適用の無理
源義朝は大悪人か
自ら権力を放棄した朝廷
「華」を目指す「夷」の優等生
歴史の過ちを正すという発想―大政奉還の預言
失徳・無能の天子・後醍醐天皇批判
天皇批判の逆効果
応用問題としての赤穂浪士論
現人神の育成者へ、そして明治維新へ
著者等紹介
山本七平[ヤマモトシチヘイ]
大正10(1921)‐平成3(1991)年。東京生まれ。青山学院高等商業部を卒業。昭和17年徴兵され、フィリピンで敗戦を迎える。収容所生活の後、22年復員。33年に山本書店を創立し、主に聖書学関係の本を出版する。昭和45(1970)年にイザヤ・ベンダサン名で出した『日本人とユダヤ人』が大ベストセラーになり、第2回大宅ノンフィクション賞を受賞。以後、自らの戦争体験や独自の日本人論をテーマに多数の著作を残す。その業績に基づき、56年、第29回菊池寛賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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CCC
4
タイトルから明治以降の話が中心だろうと思っていたけれど、江戸時代メイン、他も中世の話が多かった。そこから先は日本は変わってないから語るまでもないという事か。えー……。しかし現人神というよりは日本正統論の話だったなあ。2017/03/18
CraftsK
1
上巻に引き続いて(主に)江戸時代の文献を読めること前提でガンガン引用する展開。こりゃなかなか厳しいと思いきや、あとがきの後ろにある「日本の正統と理想主義」に内容がとてもわかりやすく纏まっているという、どんでん返し。ここ読むだけで良いんじゃないかというレベルの纏まりっぷり。それはさておき。江戸期でも今と変わらず空気を読むことは重要なポイントだったようで、空気を読んだ結果自分の首を絞めた幕府と、空気を読みつつ自分の考えを織り込み結果的に明治維新に繋がった論者という構図は興味深いところでございました2012/10/10
Mas Okada
0
山本七平渾身の作品。2度目の読了。2度読んでみて、作者の思いが少しは分かったような気がしました。2014/09/20
platoon
0
どこまで理解できたか心もとないのだが、奇妙な感覚。あおみどろの不定形なモノの種は江戸時代の朱子学にあるとのことだが、やっぱり拡張主義と外圧と閉塞感だろう2013/06/21
福耳
0
頑張って読んだ。2008/10/28