内容説明
「シは有限の極み。上のドは神の世界。知覚できないものの世界をガムランが開く」。失踪した友人から届いた三枚の絵葉書が、“私”をバリの深奥へと導く。宗教と音楽とむせかえるような自然。不思議な青年オダ。「ニュピ」にはミツコに会えるかもしれないという謎の言葉の意味は…?『7 days in BALI』として発表された傑作長編を大幅改稿。
著者等紹介
田口ランディ[タグチランディ]
1959年東京生まれ。作家・エッセイスト。広告代理店、編集プロダクションなどを経て、98年からインターネットで作品を発表。2000年に初の長編小説『コンセント』が大きな話題を呼び、ベストセラーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
リタ
9
失踪した友人ミツコを追って、マホはバリ島を訪れる。この本は、熱帯雨林の濃密な気配に彩られた彼女の七日間の記録です。いえ、これは彼女の記憶そのもの。それが果たして、妄想なのか、真実なのか、幻覚なのか、現実なのか。ひどく境い目が曖昧な幾つもの体験を通して、私はマホの魂が組み替えられてゆく様を見届けました。全てを記号で表す世界を超えて、全てをハーモニー(音)として感じられる世界へ。マホは、バリの七日間できっと七つの音を鳴らしたのです。ドからシを超えオクターヴ。私にはそれが、不自由な約束事からの跳躍に見えました。2015/02/25
Shinobi Nao
7
3年に1回くらいバリに強く惹かれる周期があって、今もまさにその真っ只中。それなのにまだ一度も行っていないバリ。バリ熱が最高潮の時に偶然手にした本がこれ。こんなの読んじゃったらやっぱり行かなくては、と思うしかない。霊的なもの(幽体離脱とか、憑依とか除霊とか、そういう類のもの)はあまり信じていないというか霊感もないのでリアルに感じないけれど、神々の棲む島をとにかくこの目で見たい。2015/08/28
namibia
2
再読。バリに行きたいと普段は思わないのに行きたいと思わせてくれる本。ガムランが聴きたい。2021/07/09
Fancy Koh(旧SMOKE)
2
失踪した友人を探しにバリ島へむかうマホ。不思議な体験をへて、彼女は世界のことわりを知る。とてもスピリチュアルな作品。田口ランディの作品は代表作の「コンセント」をはじめ、世界とどうつながるかが主題になっている。そういえばゼロ年代ってとてもスピリチュアルが流行ったよなって読んでいて思った。オダのセリフ「人間は世界とせめぎあいながら生きていて、だいたいいつもひきわけています」が印象的だった。でもこの感覚もゼロ年代だよなあ。今はきっとだいたいいつもちょい負けなんだと思う。2016/12/12
ev_ve
2
四季のない島では生と死が同時に起こっているという類の記述が印象的だった。自分が知らず日本の春夏秋冬を身の内にして生きてることに気づいて、舞台がこの島である理由に納得した。記号とハーモニーと選ばれた者と選ばれなかった者と、淡々と。オクターヴという題名、改題されたものということだけど私にはしっくりこなかった。2011/04/19