内容説明
フリーター、ニート、使い捨ての労働者たち―。職業・家庭・教育のすべてが不安定化しているリスク社会日本で、勝ち組と負け組の格差は救いようなく拡大し、「努力したところで報われない」と感じた人々から希望が消滅していく。将来に希望が持てる人と将来に絶望している人が分裂する「希望格差社会」を克明に描き出し、「格差社会」論の火付け役となった話題書、待望の文庫化。
目次
1 不安定化する社会の中で
2 リスク化する日本社会―現代のリスクの特徴
3 二極化する日本社会―引き裂かれる社会
4 戦後安定社会の構造―安心社会の形成と条件
5 職業の不安定化―ニューエコノミーのもたらすもの
6 家族の不安定化―ライフコースが予測不可能となる
7 教育の不安定化―パイプラインの機能不全
8 希望の喪失―リスクからの逃走
9 いま何ができるのか、すべきなのか
著者等紹介
山田昌弘[ヤマダマサヒロ]
1957年東京都生まれ。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東京学芸大学教育学部教授。専門は家族社会学・感情社会学。内閣府国民生活審議会委員、東京都児童福祉審議会委員などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あきぽん
62
絶望した「負け組」が「勝ち組」を死の道連れに、という事件がまたも起こったので再読。この本が書かれたゼロ年代にも池田小学校事件、秋葉原事件という似たような事件が起こっていた。昔の人が夢見ていた、職業選択と配偶者選択の自由化こそが格差を拡大した、ということに激しく納得。ただ加害者を批判するのではなく、このようなことが再発しないようにするためにはどうすればよいかを考えるべき。2019/06/01
佐島楓
41
社会学の参考文献。ちょっとここは断言できるのかな、しないほうがいいのでは・・・というところもあったけれど、社会学的知識をもとに世の中を見るとこうなるということが端的に示されていたのはよかったと思う。2015/09/28
塩崎ツトム
14
(文庫版ですら)10年前の本である。だけどもその10年の間、何も対策すらできず、物質的、精神的格差は広がるだけ広がってしまった。その間に秋葉原通り魔事件が起きた。土浦通り魔事件も起きた。だけど今でも何も変わっていない。同じところにいるためには走り続けなければならないのに。あとがき「夢と希望は全く違う。だけどもそこがなかなか社会に通じない」という言葉が重い。2018/07/25
白拍子
13
教育現場に従事し、毎日子供達を見ていると、経済的な格差がよく分かる。親の収入によって格差が遺伝するという事を目の当たりにする。現在の日本は職業、家庭、教育の全てが不安定で2極化し、「勝ち組」「負け組」の格差が拡大している。「努力は報われない」と感じた人々からは希望が消滅し、日本は将来に希望が持てる人と絶望する人に分裂する「希望格差社会」に突入しつつある。希望の喪失は社会の不安定要因となりかねず、早めに総合的な対策を講じる事が必要と主張している。最初から、ハンディのあるスタートラインに立たせてはいけない。2018/05/02
A.T
13
「格差」が流行語になって、もう10年。この本をよんで、絶望的になった人も多いだろう。わたしはその間の自分の状況に納得はしてないまでも我慢は出来るからいい。でも、今の30代の方々はまだ夢を捨てきれずに将来を決められないでいる人がたくさんおられるかも。非力ながらも、自分にもできることを探して若い人の夢をジャマしないよう気にかけていこうと思いました。2016/03/23