内容説明
注意・挨拶・お願い・告知などのテープ放送や機械音を耳にすると、もう著者は黙っていられない。昼夜を問わず日本全国で繰り広げられる善意の大合唱に、著者の“哲学魂”が炸裂する。無自覚なままに責任を回避し、結局は思考停止の状態に陥っているということが、著者の怒りを激しく誘うのである。肝心のところは変わっていない日本人の感性の質を執拗に抉る、異色の日本論。
目次
第1章 音漬け社会(「文化騒音」とは何か;「個人語」と「世間語」 ほか)
第2章 拡大する戦場(音は人を狂気に近づける;音は皮膚のウチに侵入する ほか)
第3章 定型的な言葉の氾濫(標語ノイローゼ;「エレベーターの扉をこじ開けないでください!」 ほか)
第4章 日本人のからだ(からだとしての文化空間;文化空間における図と地 ほか)
第5章 共生は可能か(解決は難しい;思想はいつも現実の前に屈服する ほか)
著者等紹介
中島義道[ナカジマヨシミチ]
1946年福岡県生まれ。77年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。83年、ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士)。電気通信大学教授
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感想・レビュー
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金吾
5
音に関する中島節が炸裂しています。「うるさい日本の私」よりパワーアップしている印象をもちました。言っていることは同意できる部分が多く、読んでいても面白いですが、近くにいると疲れるかなと思いました。2020/03/12
anarchy_in_oita
4
自分は人身事故の際に車掌が遅れを詫びることに違和感を覚える性格なので、かなり期待して読み始めたのだが見事にそれを裏切られた。行動に移していない苦しみはその人にとって程度が低い苦しみであると作者は言う。作者が高圧的な態度をとったことで電話を切られたり、様々な抗議を受けているにもかかわらずである。あんたが大嫌いな大衆たちもあんたが雑音を嫌うのと同様にしっかりあんたの言動に抗議してるじゃないか、そんなこともわからないのか。哲学塾授業は面白く読んだのに非常に残念である。内容も特に新たな知見があるわけでもない。駄本2020/03/22
白義
4
タイトルでは気づかなかったけど、「騒音文化論」の改題最新版。うるさい日本の私以上に騒音をかき鳴らす日本の、その風土への怒り、怨み辛みと闘いの記録が思索が詰まっている。今までと比べると、著者が騒音社会と和解する策が提案されていて、歩み寄った印象を受けるかもしれないがやはり最後まで読むと日本人に対する、苛烈で徹底的な拒絶の書。半分、と書いているところが数少ない妥協成分だが、マジョリティにはこれで半分か当惑を与えるだろう。実際は多分、これで一割にも満たない、微々たる譲歩なのだろうけど2012/08/25
xtc1961ymo
3
難儀な哲学者、中島義道さんの管理放送に関する戦い。「うるさい日本の私」(過去に読んだ)の続編。管理放送や管理標識など、意味のないお節介社会に愛想を尽かして、変人扱いされても、食い下がらずに理性的に説得するが、かるがゆえにまた嫌われる。因果です。くどい位の音案内と標識は何か事故が有ったときのアリバイ作り、(この標識に書いてあるだろうが!このタコ)に有るような気はしてました。美意識の欠如と最近流行りのヤンキー化する都市が深く絡んでるような気がします。思考放棄の産物か?2014/10/15
ダイキ
2
解説・呉智英。2024/01/04