内容説明
グローバル市場経済にとっての真の危機とは、金融危機や恐慌ではない。基軸通貨ドルの価値が暴落してしまうグローバルなハイパー・インフレーションである。しかし、自由を知ってしまった人類は好むと好まざるとにかかわらず、資本主義の中で生きていかざるをえない。21世紀の資本主義の中で、何が可能であり、何をなすべきかを考察し、法人制度や市民社会のあり方までを問う先鋭的論考。
目次
1 二十一世紀へむけて(二十一世紀の資本主義論―グローバル市場経済の危機;インターネット資本主義と電子貨幣)
2 短いエッセイ(売買と買売;商業には名前がなかった ほか)
3 長いエッセイ(西鶴の大晦日;美しきヘレネーの話 ほか)
4 経済学をめぐって(マクロ経済学とは何か;ケインズとシュムペーター ほか)
5 時代とともに(資本主義「理念」の敗北;歴史の終焉と歴史の現実 ほか)
著者等紹介
岩井克人[イワイカツヒト]
1947年東京生まれ。1969年東京大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得ののち、カリフォルニア大学バークレイ校、イエール大学経済学部、同大学コウルズ経済研究所勤務をへて、1989年より東京大学経済学部教授。著書に『不均衡動学』(1982年度日経・経済図書文化賞特賞)、『貨幣論』(1993年度第15回サントリー学芸賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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WATA
47
資本主義と貨幣に関するエッセイ集。各エッセイが書かれたのは1990年代。細部に古さを感じる部分はあるが、貨幣の本質をついた鋭い指摘は現在でも有効。RSA暗号を用いた純粋な電子貨幣についての講演録は、最近のビットコイン騒動にも繋がる。表題にもなっている「二十一世紀の資本主義論」では、投機マネーが市場経済に危機をもたらすこと、市場が自由化されるほど不安定になることを鮮やかに描き出している。グローバル経済と新自由主義が世界を包み込んでいる今こそ、その危うさを冷静に指摘している本書は広く読まれるべきだと感じた。2014/04/22
kaizen@名古屋de朝活読書会
36
平成22年のセンター試験に出題があったので読みました。21世紀のという本の題は少し違うなと思いました。20世紀の発想をかなりひきずっていて、21世紀の発想の提案にはなっていないかもしれない。センター試験は「資本主義と「人間」」という朝日新聞1985年4月2日夕刊に掲載のあった記事とのことです。その後、単行本になり、文庫になっています。試験問題と単行本の違いは、問題のためのカタカナへの書き換えや、横線だけでなく、「ふりがな」と出典の記載の有無があることがわかりました。 新聞掲載時の内容ははまだ未確認です。 2019/08/04
KAZOO
34
様々なメディアに発表した評論集です。主には日本経済新聞のやさしい経済学が中心になっていますが、それにしても内容は非常に重たいものがあります。資本主義論が中心の話題とはなっていますが貨幣論やケインズの理論についての言及もあります。私としては、西鶴の大晦日という評論が読みでがありました。2014/11/13
さきん
18
ハイパーインフレーションが起こるには、貨幣の信用が失われる他に、貨幣の過剰供給、商品の供給不足があると思った。また、信用が失われる条件としては、政府の財政も目安になるかもしれないが、同時に国民資産や付加価値を生み出す力、産業力、治安なども総合的に判断されると思う。今の日本に関しては、財政は悲惨であるが、それ以外の指標は概ね貨幣の信頼を裏付けている。問題は、今後もそれら貨幣の価値を裏付ける国力を維持できるかだと思う。同じことはアメリカにも言える。2016/01/20
ライアン
10
学者さんの書く本なのでわかりずらく読むのに難儀すた。特に序盤はパラドックスを多用してホントどうしようかと思った。貨幣は「予想の無限の連鎖」と言うのは投資全般にも言えることかな。ドルを基軸通貨と呼ぶ由縁やまだ貨幣ができる前の物々交換を通して物の価値についての話は勉強になった。偽冊なのに本物のお札以上の価値を持たせたボッグス氏の犯罪が面白かった2015/11/30