内容説明
二〇世紀哲学の方向性を決定づけたウィトゲンシュタイン前期の書『論理哲学論考』。この衝撃的著作を、哲学界きっての柔軟な語り口で知られる著者が分かりやすく読み解き、独自の解釈を踏まえて再構築する。ここでは単なる歴史的価値を超えて、『論考』の生き生きとした声を聴くことができるだろう。本書は、こう締めくくられる―「語りきれぬことは語り続けねばならない」。比類なき傑作読本にして、たまらなくスリリングな快著。ウィトゲンシュタイン思想全体の流れの中で『論考』を再評価する新原稿、「『哲学探究』から見た『論理哲学論考』」を付した増補決定版。
目次
語りえぬものについては、沈黙せねばならない
現実から可能性へ
対象に至る方法
これでラッセルのパラドクスは解決する
論理が姿を現す
単純と複合
要素命題の相互独立性
論理はア・プリオリである
命題の構成可能性と無限
独我論
自我は対象ではない
必然性のありか
死について、幸福について
『論考』の向こう
著者等紹介
野矢茂樹[ノヤシゲキ]
1954年、東京生れ。1985年、東京大学大学院博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科助教授。専攻、哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chanvesa
39
「語り得ぬものについては、沈黙せねばならない」は、カント以来の哲学の伝統の一形態なのかと何となく思っていた。この言葉の中に「たんに語ることができないという沈黙ではない。示すこともできない。いっそう深いその沈黙のうちに差し出される『生の器』を、生きる意志で満たすこと」(307頁)が背景にあるという指摘は、ウィトゲンシュタインの熱さを知らされる反面、この哲学の難しさを思い知らされる。「死が人生のできごとではない」という背景にある「私が私の死を語ることは現実の足場を欠いた虚構の語り」(300頁)という興味深さ。2017/03/04
かんやん
31
テクストは不変で、様々な解釈は絶望の表明であると言った作家がいたが、様々な解釈を生み得るのは豊かさとも言える。ウィトゲンシュタインの天才は、あの『論考』の形式を考え出したところにあるのでは。本書は一字一句とまでは言えないまでも粘り強く、ほとんど愚直なまでに具体的に『論考』の命題を考え抜いて、更新しようという試みで、永井均氏の『ウィトゲンシュタイン入門』よりずっとハマった。ただし、徒労感は否めない。言葉と思考の限界を見極め、その向こう側に語り得ぬものを示すというストイックな姿勢には惹かれるものの。2019/12/18
おじいやん featuring おじいちゃん( ̄+ー ̄)
27
質問には質問の資質があり資質を満たさない問いに対して答えを与えるのは不可能である。との認識でいいのだろうか?うーん今の僕にはイマイチよくわからんちんです。ただやっぱりウィトゲンシュタインの原本よりはわかりやすいですね。あれは日本語に翻訳されてるのに1ページ目から書いてある文字がそもそも読めないという恥辱を人生で初めて味わされた経験でしたからまぁ生きてばいずれわかる時がくるだろう!全部わかりきってる世界なんて退屈でしかたないわ!わからない事があるって素敵!2016/09/26
魚京童!
20
哲学は言語学に成り下がった。ずっとそう思っていた。論地哲学論考で哲学は終わったのだと。違うらしい。ウィトゲンシュタイン自身も後期の作品で否定したらしい。では私も哲学を始めなければならない。言語学ではないのだから。新しい哲学を進めなければならない。私が人間であるために。2018/06/10
吉野ヶ里
18
卒論の準備ー。ちゃんと読むと解説本ってきついですね。二周目なのにまだまだよくわかんないとこあるし。でも、まあ、論考本体よりは百倍くらいわかりやすいんじゃないかなって思います。草稿もどっかで入手せにゃなあ……。あとわたしとウィトゲンシュタインはシンクロ率高めだと思う。言いたいことをばしって言ってもらってる感が凄い。野矢さんの解釈や例はわかりやすくってとても助かる。ただ、未だに命題の意味を真理条件とイコールと捉えるのは納得いかない。んんん、修行不足ですな。探求とか読んだ後また読もうっと。2015/06/15