内容説明
コレラ、毒婦、妖怪学、千里眼、西郷伝説…。明治から大正、昭和にかけての近代日本に生まれては消えていったおびただしい数のうわさ。人々の欲望、不安、怖れを乗せ、時代の裂け目より噴出し、世間を駆け抜けていったうわさは、庶民の精神を正確に映し出す真実の鏡であった。ウソをマコトに、マコトをウソに、いとも簡単に変換を可能にする装置“うわさ”を素材に、近代日本の透視図を描き出したサントリー学芸賞受賞の力作評論。
目次
兎、虎列刺、絹布そして唄
毒婦たちの栄光
鹿鳴館と仁侠
世論と壮士
妖怪学と失念術
超能力の発見―千里眼事件
芸術か、スキャンダルか
コラムの誕生と消滅―「茶話」の時代
天譴、自警団、この際やっつけろ
英雄生存伝説と日本起源論異説
“清潔な帝国”下の『日乗』―荷風と昭和初期
デマと統制―木炭もない、石炭もない
“清潔な帝国”と敗戦
“地”のうわさ、海の記憶
著者等紹介
松山巖[マツヤマイワオ]
1945年東京生まれ。東京芸術大学美術学部建築科卒業。評論家、作家。『うわさの遠近法』で、サントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
3
「うわさ」からみる近代庶民史。「うわさ」の名のもとに雑多な性質の情報を詰込みすぎている。とはいえ「うわさ」の暗い側面だけではなく、庶民の救済装置としての側面にも焦点を当てているあたり、著者の姿勢には非常な共感を持った。これは花部英雄氏が指摘していることだが、ニシン場や炭鉱といった過酷な労働環境に身を置く人々の所有する説話群には、自分たちの境遇や価値を転倒させるようなブラック・ユーモアが頻出するという。いわば笑いによる救済である。人々の生の営みに密着すること。本やネットだけじゃわからんこともあるのだ。2010/08/23
じめる
2
日本の近代から近現代を「うわさ」の観点から分析しなおした本。うわさとは世の反映であり、人々の心の影像である。人は情報が得にくい時代だからうわさをしたのか? うわさが真実であれ嘘であれ、己の享楽と結びつけて尖端的に反応する人の姿がある。2013/10/31
ymazda1
1
紙媒体の貧弱な情報しかなかった時代は「うわさ」を欲し、情報にあふれた現代は「真実」を欲すってことなんかなって思いながら読んでた・・・にしても、義経=ジンギスカン伝説って、こんな昔から存在してたのか・・・「ジパング深蒼海流」に「ジパング」のSF展開みたくジンギスカン展開を期待してたけど、終っちゃった。。。
ジョン
1
明治から昭和初期にかけての噂、デマをとりあげ、世情を透かすような。人心との関係も書かれてます2016/09/28