内容説明
アイヌ族はかつて文字を用いず、もっぱら口伝えでその歴史や喜び、悲しみ、いきどおりのすべてを伝えてきた。年長者から年少者へと口伝えされてきたアイヌの昔話は、もっとも純粋かつゆたかで奥深い伝承文化の遺産の一つと言えるであろう。本書は、アイヌ族が遠い祖先から代々受け継いだ韻文のユーカラと散文のウエペケレ(トゥイタク)の中から、いまも愛されている話を選んで編集した。アイヌ族のつつましいこの遺産は、神々に対する畏敬の心、自然や隣人に寄せるやさしさをよみがえらせてくれるだろう。
目次
日の神と烏と鼠
この世創り
コタンカラカムイの人創り
アイヌの起こり
やっぱりアイヌが偉いんだ
始祖の誕生
アイヌラックルの恋
銀の滴降るまわりに
日の神救出
大ます退治〔ほか〕
著者等紹介
稲田浩二[イナダコウジ]
1925年生まれ。広島文理科大学文学部卒業。京都女子大学教授、梅花女子大学教授を歴任。京都女子大学名誉教授。専攻、国文学、民俗学。昔話の調査、採集に携わり四十数年、六万話にのぼる話に通暁する。その成果は、『日本昔話通観』全31巻としてまとめられた
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
95
アイヌ神謡集、知里幸恵を歴史的な資料とすれば、 本書は、アイヌ神謡集も参考文献にした、お話集である。 研究目的ではなく、暮らしていた人たちの文化を知り、 日々の暮らしで共感できる部分があることは、現代文化の流れの中で、 一息、息がつけるようなものである。 2013/04/29
花子
2
アイヌ独自の哲学が感じられて面白い。昔の人は動物をよく観察していたんですね。人間も自然の中の一粒だったことを思い出させてくれる昔話の数々。英雄の神さまがS系男子だったり普通にエロかったりするのもなんかマンガみたいにキャラ立ってるね(笑)2014/05/15
ナユタ
2
日本の神話より、カムイと人との距離が近い感じがする。パナンペとペナンぺの話が面白い。パターンは決まっているけれど、バリエーションの多いこと。2010/10/12
うえだ
2
古事記とは違う日本の昔話。昔話って、どこの昔話も無茶でたまに理不尽でちょっと説教臭くて面白い。沖縄版も読んでみたい。2010/05/15
Panico
1
アイヌの物語は神様の存在そのものがなんだか漠然としていたり、敵と戦って勝つような話が極端に少なかったり、彼らの生活環境をいろいろ想像させてくれる。大いなる自然に感謝を欠かさない人々なのだろう(イコール温和というわけでもなさそうだが)2012/12/28