内容説明
『岬』『枯木灘』『千年の愉楽』『奇跡』『讃歌』『軽蔑』…旺盛な生成と破壊、変化と転生の末に、永遠に中断された中上健次の物語。「筆者が前提としたことはただひとつ、中上のテクストを矛盾なき体系として了解するということであった。彼が遺した厖大なる言葉を、その放棄中断も含めて厳密に読解の対象とすることが、求められている」。「中上との出会いが、わたしにおける書くことの始まりに決定的な意味をもっていた」という著者が、13年の歳月をかけて彼の作品宇宙を追跡しきった渾身の作家論=物語論。
目次
第1章 五衰の悦び
第2章 異界の変容
第3章 偽史と情熱
第4章 貴種の終焉
第5章 彷徨する兄弟
第6章 この路地の最後の者
第7章 重力の秋
補遺(一番はじめの出来事;声と文様;中上健次の生涯)
著者等紹介
四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
1958年生まれ。東京大学大学院で比較文化・比較文学を専攻。現在、明治学院大学文学部芸術学科教授として、映画史・映像学を講じる。著書『月島物語』(集英社)で斎藤緑雨賞を、『映画史への招待』(岩波書店)でサントリー学芸賞を、『モロッコ流謫』で伊藤整文学賞を受賞
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