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ちくま学芸文庫
鏡と皮膚―芸術のミュトロギア

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  • サイズ 文庫判/ページ数 331p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480086341
  • NDC分類 704
  • Cコード C0170

内容説明

深みに「真実」を求めてはならない。なぜなら「生はいかなる深さも要求しない。その逆である」(ヴァレリー)からである。オルフェウスがエウリディケーと見つめ合った瞳に、アテナの盾を飾ったメドゥーサの首に、マルシュアスの剥がされた皮に、キリストの血と汗を拭ったヴェロニカの布に―神話の根拠を古今の画家たちの作品からたどり、鏡と皮膚の織りなす華麗かつ官能的な物語を読み解く。美と醜、表層と深層、外面と内面、仮象と現実という二元論を失効させるまったく新しい芸術論。鷲田清一との対談「表層のエロス」収録。

目次

序 表層のバロック的遁走
1 オルフェウスの鏡
2 ナルキッソスの変幻
3 メドゥーサの首
間奏 可視性の謎―ベラスケス“侍女たち”をめぐって
4 マルシュアスの皮剥ぎ
5 ヴェロニカの布
6 真理のヴェール
結び 皮膚論的な想像力のために
対談 表層のエロス―皮膚論的想像力に向けて

著者等紹介

谷川渥[タニガワアツシ]
1948年、東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は美学。現在、国学院大学文学部教授。E・H・ゴンブリッチ『棒馬考』、バルトルシャイティス『鏡』などの翻訳のほか、著書に『形象と時間』(講談社学術文庫)、『美学の逆説』(勁草書房)、『幻想の地誌学』(ちくま学芸文庫)、『文学の皮膚』(白水社)、『イコノクリティック』(北宋社)、『芸術をめぐる言葉』(美術出版社)、『三島由紀夫の美学講座』(編著、ちくま文庫)などがある
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やいっち

60
鑑賞などといった、やわな言葉が美術や絵画の世界に使われるようになったのは、いつのことなのか。きっと、絵画作品が美術館に収められ一般大衆に、これみよがしに展覧させるようになってからではないか。見てもいい、しかし、触れては成らない。触れていいのは選ばれた者のみ。  選ばれたものは、美女(美男)と一夜を共にする特権を得たものは、鑑賞に止まるはずがない。美を手中にした(かのような幻想に囚われた)者は、美を眺める。2005/06/21

HANA

48
芸術における「鏡」と「皮膚」について論じた一冊。美術に留まらず文化論、神話論と本書の範疇は幅広い。著者の博覧強記が留まる事を許さないのか、読者のこちらも次から次へと目の前に展開される題材に目を奪われるばかり。内容は前半では「鏡」を後半では「皮膚」をと大別できるが、それらが間奏を挟んで絶妙に絡み合っている。神話と鏡の関係性も面白かったのだが、一番興味深かったのは後半、皮膚と襞、ヴェールを論じた部分。皮剥ぎから聖骸布に現代思想と読者にも相当の事が求められるが、絵の情報に浸っているだけでも十全に楽しかった。2015/05/06

藤月はな(灯れ松明の火)

35
知を刺激される良書。ラカンの「主体は鏡で映すことで己自身を認識するが同時に乖離した虚影である自身の姿に主体は隷属してしまう」鏡映自己を連想させるオルフェウスの妻との別離と象徴に彩られたナルキッソス、メドゥーサの首の隠喩、「侍女たち」の構造の歪さ、皮剥ぎのモチーフによる解剖学的美、聖骸布によって推測されるサロメ的所有欲と間接的肉欲、秘されて隠されることで剥いで真理を知りたくなる欲求と興味深いテーマぞろいで楽しかったです。2013/05/03

三柴ゆよし

21
諏訪哲史『ロンバルディア遠景』の元ネタのひとつ。いずれ読まねばと思いつつ長らく積んでいたが、いざ読みはじめるとこれが実にオモローで、するすると読み終えてしまった。鏡とまなざしから出発した思弁が、ベラスケスの絵画「ラス・メニーナス」を折り返し地点として、それこそ鏡の向こう側に抜けるように、皮膚へと導かれていく表層的美学エッセイ。いささか牽強付会な部分がなきにしもあらずだがあらずだが、そこもまた魅力として生きている書物だと思う。メデューサの視線から皮剥ぎのテーマへと接続していく箇所など見事な離れ業で興奮した。2020/06/28

ラウリスタ~

13
絵画における鏡と皮膚のテーマ。前半が鏡、後半が皮膚と結構はっきりと分かれている。前半はよくある話。ナルシス、ラス・メニーナス、オルフェウス、どっかで聞いたことの変奏。後半の皮膚が面白い。谷川さんが後にこっちの方向でかなり面白い本を書くからか、やっぱり独自性高いし、かなり突拍子も無いこと言っちゃうし。人体において最も深いものは、ヴァレリーに言わせれば皮膚。表面の面白さ。キリストと女たちとの接触を血を通して(不謹慎に)解釈するとことかも、ぶっ飛んでるが面白い。鷲田との対談がラストに付いている。2013/08/20

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