内容説明
世界を地図に収め、あるいは自らのなかに世界を照射し、空想の土地をめざして旅立っていった作家たち。海の彼方の安らかな母胎トマス・モア『ユートピア』島、ヴェルヌ『海底二万里』のネモ船長の壮絶なる孤独、ポオやメルヴィルが描いた底もなく深い霊魂の姿たる神秘の大洋、ウェルズや久生十蘭らが幻視した地下世界…想像力の地平は無限だ。文学史における空間的・地誌学的思考とその表象の連綿たる系譜を類型論的にたどり、貴重な図版多数とともに解き明かす驚くべき幻想文学誌。スリリングな知的冒険が始まる。
目次
幻想の島へ
幾何学的な子宮
プロスペローの魔島
月―空に浮かぶ島
海という装置
地底の旅
隠喩としての砂漠
密林の美女
人体地図の系譜
二枚の地図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Akito Yoshiue
10
引用文と図版がどれも素晴らしい。2017/10/17
魚京童!
9
お前は何がしたい?2018/09/16
Bo-he-mian
5
十代の頃に、背徳のオブセッションへと誘ってくれたのは澁澤龍彦と種村季弘の両氏だったが、30歳をすぎ再び知的遊戯へ引きずり込んでくれたのは、高山宏と谷川渥だった。谷川氏による本書は、トマス・モアを皮切りにヴェルヌやポオやメルヴィル、ユイスマンス、シャミッソー、久生十蘭らが幻視した空想の土地を、溢れ出る知識でこれでもかと深読みする、幻想文学のトポグラフィーである。知の迷宮を彷徨う快楽をたっぷりと味わえる、極上の脳内冒険だ。2001/07/15
いちはじめ
0
僕の場合、ミステリやSFのついでに幻想文学も少しは読むという程度だが、本書はポオ、ヴェルヌ、ウエルズなども出てくるので興味深く読んだ。図版も多めなので楽しい。2000/10/16