内容説明
古典的な「表象」の崩壊に代わって「イメージ」の出現という出来事が成立する時点において、恐らくエッフェル塔とは、西欧の表象空間に起きたこの地の竣工の日付をこの認識論的断層の上に重ね合わせることが可能であるように思える。エッフェル塔の伝記を辿ってゆくとき、こうした「近代」的な「イメージ」の生成過程と、それを可能ならしめた文化的・社会的・政治的力学の諸条件が、或る模範的な姿で浮かび上がってくる。近代と表象とをめぐるさまざまな問題を体現した特権的な塔を透徹した論理と輝かしくも華麗なエクリチュールで徹底的に読み解く記念碑的力作。
目次
序章 「無用性」の美学のために
第1部 三百メートルの鉄塔
第2部 階級と地政学
第3部 相似・反復・投射
終章 「近代」あるいは未了の空位期
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
10
シンエヴァのワンカット目が本書単行本の表紙からの引用。1995年に出ているのでエヴァと同年。エッフェル塔を美学の変遷(モダニズムの揺らぎ)や建築技術史(石、鉄、鋼の関係)など、あらゆる観点から批評していく。終始蓮實重彦由来のレトリックで書かれているけれど、そこから漏れ出る実直さが本書の(というか松浦さんの)良さだと思った。複製可能な「模型」であること、虚空へ昇る「エレベーター」であること。エッフェル塔が20世紀のイメージを集約する機能があった(そしてそれが失われゆく)という分析に、引用の胆がある。2021/03/24
ymazda1
1
「エッフェル塔」をネタにこんなに書けるのかってビックリしたというか、自分にものの見方みたいなもんを教えてくれた本のような気もする。。。 この本を読んだあとに芥川賞の受賞を知って受賞作を読んでみたけど、個人的には、やっぱこの本の方が好きです。。。ごめんなさい。。。
あだこ
1
エッフェル塔を軸にした言説分析。19世紀から20世紀にかけてのエッフェル塔建築に対する眼差し、その変化を芸術論・記号論・文学などを縦横して記述していく。エッフェル塔を分析することで同時代のパリを間接的に論じることとなり、それをモデルとした東京という都市についても改めて考えさせられる。2012/12/30
ペーパークリップ
1
大変な書物。2012/04/05
シュミットさん
1
都市論、建築論、メディア論、知識論…とてつもない読みごたえ。2008/12/02